その典型が「ハロー効果」と呼ばれ、これまでのポジティブorネガティブな評判で正しい人事評価ができなくなること。ハローとは絵画で聖人やイエス・キリストの頭上や後ろに描かれる後輪のこと。つまり、その人そのものではなく後ろから輝いて見せている光、つまりほかの目立つ特徴によって、全体項目を評価して評価が歪められる(認知バイアス)現象です。
心理学者エドワード・ソーンダイクが初めて用いた言葉で、人事評価において頻繁に起きる偏り現象として有名です。本来の人事評価は各自が与えられた目標や役割に関して、評価期間内の成果や行動から評価されなければなりません。ところが気配り・態度など、周囲による評判の良しあしで人事評価が決まることがあります。
評判に影響されたバイアス
たとえば、評価期間における業績は悪いにもかかわらず、これまでの熱心な仕事ぶりで培われた「いい評判」により人事評価が甘めに査定されてしまうようなこと。逆に「悪い評判」が積み重なっているといい業績にもかかわらず、相応の人事評価が得られないことが起きるということ。評判は評価の不公平を生み出すことがあります。本来あってはならないと思いますが、職場では頻繁に起きているのではないでしょうか。
ちなみにアデコが行った人事評価制度に関するアンケート調査によると、6割以上の人が勤務先の人事評価制度に不満をもち、その理由の最上位は評価基準が不明確とのこと。
こうした不満の要因の1つに、評判に影響されたバイアス=偏りが起きていることがあるのではないかと筆者は考えます。なので、「評判を意識しておきなさい」と前述の役員は研修の最後に一言切り出したのかもしれません。
筆者はこの一言に同意すると同時に、時代が変わり、自分の評判をしっかりマネジメントすることが次世代リーダーの重要な仕事だと、そのくらい強くメッセージを発信してもいいくらいではないかと思います。
少々脱線しますが、ネットやSNSの普及により、コメント1つで炎上→取り返しがつかないほどに評判を落としてしまう有名人がたくさん出てくる時代になりました。例をあげればキリがありませんが、何げない正義感や優越感から出てしまった本音をSNS等に書き込んだものの……内容が周囲からは不評。長年積み上げてきた「いい評判」がすっかり消えてしまった人はたくさんいます。
さらに書き込まれたものは消すことが困難。ゆえに評判を落とすリスクがある発言や行動は慎むべきと考えなければなりません。
評判を落とすリスクがあるのは有名人だけではありません。普通の会社員にも起きるリスクがあります。取材した不動産会社に勤務しているDさんは勤勉で、誠実な人物として評判の高い人物でした。ところが匿名のつもりで書き込んだ会社の評判を書き込むサイトで、
《適当にさぼっていても評価は大きく変わりませんよ》
とコメントしたのが「これDさんだよね」とわかってしまい、本当は怠惰な性格なのだと悪い評判が社内に広がることになりました。Dさんはこの悪い評判を払拭する自信がなかったので退職することになりました。いい評判を得るには時間がかかりますが、悪い評判を得てしまうのは短時間で起きること。そのようにはなりたくありませんがどうしたらいいのでしょうか?
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