30代から差がつく「社内評判をつくる」働き方 リーダーになれない人に、一歩欠けたもの

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アメリカでは自分の評判をコントロールする手法として、レピュテーション・マネジメントという言葉がよく用いられます。いい評判=レピュテーションの獲得・維持、傷ついたレピュテーションの回復などを目的とした活動のことです。

よく注目されるのは、悪いレピュテーションを初期の段階で食い止めること。もともと、悪いレピュテーションのほうが良いレピュテーションよりも広がりやすいものですが、前述したように、近年、この傾向は強まっているからです。こうした手法は企業のリスクマネジメントでは当たり前になりつつありますが、各自が自分を守るために活用が徐々に広がっています。ちなみにレピュテーション・マネジメントで重要なのは、

・悪い評判を生み出さない

・いい評判を積み上げる

ためのコミュニケーションです。職場を含むビジネス上のコミュニケーションはすべて自分の評判にかかわります。ゆえに悪い評判につながるNGワード、たとえば、周囲に対する批判や怠惰な姿勢を示す言葉を使わないこと。そして、いい評判を積み上げるということ。いい評判を積み上げると言うと、まるで周囲に媚びるようで抵抗を感じる人がいるかもしれませんが、自分らしさを伝えるためと置き換えてみてはどうでしょうか。自分の仕事に対する信条や想いを周囲に的確な言葉で伝えること。その伝えた言葉に基づいた行動を徹底すること。それが自分のいい評判を積み上げることになるはずです。こうした取り組みをすることで仕事をしやすい環境が得られる可能性は相当に高まります。

筆者もビジネスパーソンとして成功してきた人物を数多くみてきましたが、そうした人の大半はレピュテーション・マネジメントを意識してコミュニケーションにこだわっていました。ちなみにマスコミに登場して大いに毒舌を吐いているようにみえる経営者も悪い評判にまではつながらないように、巧みにマネジメントしているように感じました。

取り組むなら中堅クラスのうちに…

さて、後日談になりますが、冒頭の役員の一言には背景がありました。周囲の評判を気にしないことで、リーダーとしての役割を任されないでいる過去の研修受講者が何人もいたからのようなのです。本人にすればよかれと思って同僚にはっきりものを言っているだけで、傷つける発言をしても気にしないといったことかもしれませんが、それが評判がよくないと指摘すると、

「間違ったことは言っていません」

と切り返されるだけ。確かに人事評価は高いのですが職場での評判は最悪。そんな人は(報酬は上がるものの)リーダーの役職にはつけないようです。

また、人事評価で自分よりも低いと思っていた同僚に肩書的にはおいていかれる状況になったケースをいくつも見てきたようです。やがて、評判の悪いことを反省することになりますが、時すでに遅し。そうした経緯から、評判の重要性に気づき、レピュテーション・マネジメントに取り組むなら中堅クラスのうちに……との思いがあるようです。何げないようで含蓄がある一言であったのですね。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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