兵庫の「公立進学校」が強豪私立と戦える理由 報徳学園に惜敗した長田高校は異例のチーム
長田高校は、偏差値70に届く県下の公立高校としては有数の進学校だ。今春に卒業した野球部からは、京都大学1人、大阪大学5人、神戸大学4人の現役合格者を出している。
野球部員たちも、大学進学を見越して同校を選択する。当然、野球部にもスポーツ推薦や特待生はいない。
それゆえ、入学時の戦力は一般的な公立高校と大差ないといえるだろう。
野球部の監督を務める、永井伸哉氏は毎年入学してくる野球部員たちの能力をこう分析する。
「ウチに入学してくる時点で、中学時代から注目を浴びていたというような選手は皆無に等しい。それどころか、いわゆる完成度の高い選手が入部することも極めてまれです。
硬球(シニアリーグ出身)経験者も年に1人いればいいほう。むしろ一般的な公立高校と比較しても、能力面だけ見ると低いといえるかもしれません。
だから、部員たちはまずは、体力づくり。守備や走塁といった基礎練習から始めます。ただ、彼らは良い意味で染まってないんですね。だからこそ、吸収も早いし、考える能力を備えている子は多いとは感じています」
思考力を鍛える指導方法
長田高校の練習時間は短い。塾通いの生徒も多く、練習に当てられる時間は実質放課後の2~3時間程度だ。そんな環境の中でも、選手たちは急激な成長曲線を描いている。その秘訣は集中力と思考力を養うことだという。永井監督が続ける。
「野球と学業の両立は口でいうほど簡単ではありません。膨大な量である、学校の課題をこなすだけでも大変ですから。ただ、それもあってかウチの生徒たちは、時間の大切さを理解している面はある。貴重な時間を使って野球をしている、という意識があるんです。
だからこそ、野球は野球。勉強は勉強とはっきりと線を引くことができます。たとえば練習では必ず当日の目標、中期的な目標、チーム目標を掲げて意識をすることは続けています。明確な目標を持ち解決方法を探すこと、1つのことに打ち込む際の集中力は高いものがある。2年前の園田、今年の橋本にしても1年時の夏の段階では130キロに届かない投手でした。自分で考えることをやめず、高い集中力を維持し、自発的に動いたからこその成長です」
2年前の夏、大会前の園田に何度か話を聞いた。大会直前のケガに泣き、まともな練習すらできなかった中でも、こう話していた。
「正直、ケガの状態はよくありません。ただ、甲子園に出るには自分が1人で投げ抜くつもりです。今の状態でも、抑えることはできる。たとえば、初球で打者の反応を見て、そこで打者の狙っている球種を探るんです。
だいたい打者の反応で狙い球がわかりますし、相手の裏を突く投球ができればチームを勝利に導くことができる。考えた野球をすれば、上を目指せるはずです。チームメイトも(2016年春センバツの)甲子園を経て、たくましくなっていますから」
高校生とは思えない野球脳を感じさせる発言も、長田だからこそ養われた感覚かもしれない。
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