兵庫の「公立進学校」が強豪私立と戦える理由 報徳学園に惜敗した長田高校は異例のチーム
野球は番狂わせが少ないスポーツである。それは、高校野球においても同様だ。特に参加高校が多い都市部に近づくほど、その傾向は顕著になるといえるだろう。公立高校と、日本中のシニアやボーイズリーグなどから野球留学が行われている強豪私立校の差は年々広がっている。
ところが、兵庫県の公立進学校において、異例といえるチームの存在をご存じだろうか。
2016年春の選抜高等学校野球大会、21世紀枠で初の甲子園出場を果たし注目を浴びた長田(ながた)高校だ。同年夏の兵庫大会では、甲子園に出場した市立尼崎高校と接戦を演じた。
今夏の100回大会では東兵庫代表として出場する兵庫の雄・報徳学園に、ベスト8で1対0の惜敗。2010年から夏大会では、3度のベスト8進出を果たしており、激戦区・兵庫において、公立高校の中でも確たる成績を残し始めている。
長田では選手たちが育っている
そんな長田高校では、2016年は甲子園を沸かせた園田涼輔(現・筑波大学)、今年は最速147キロ右腕の橋本達弥とドラフト候補の投手が“育って”いる。橋本は報徳学園との一戦で、今秋のドラフト1位候補の好打者、小園海斗を三振含む4打数無安打と沈黙させ、報徳打線を3安打に抑える圧巻の投球を見せた。スポーツ紙・高校野球担当記者は報徳戦を振り返り、橋本の能力をこう評価する。
「橋本君は、小園君を含め強打者そろう報徳打線にまったく自分のバッティングをさせなかった。
今日のピッチングであれば、高校生ではまず打てない。大阪桐蔭も取材していますが、強打の桐蔭でも、今日の彼を打ち崩せるイメージが湧かないですね」
特筆すべきは、橋本が投手として本格的な練習を始めたのは1年夏からということだ。
2年時の腰椎分離症、3年時に再度の分離症などを含め約半年も戦列を離れており、実質1年で投手として急激に成長している。また、先述した園田にしても、中学時代はまったく注目を浴びる存在ではなく、2年秋から突如頭角を現し、県下の強豪校相手にも三振の山を築いた。
部員のほぼ全員が軟式上がりで、シニアの経験者もごく少数という長田では、当然ながらスポーツ推薦は1人もいない。だが、近年の成績や好投手を排出しているのは決して偶然ではない。進学校が強豪私立と互角に戦える理由はどこにあるのか。その背景を探った。
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