兵庫の「公立進学校」が強豪私立と戦える理由 報徳学園に惜敗した長田高校は異例のチーム

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こうして、データを意識したID野球は効果を上げていくことになる。練習中のティーバッティングや、シート打撃でも“分析担当”と言われる部員が、タブレットで動画を回し、フォームのチェックやスイングの軌道を細かく確認する。レギュラーの選手が、試合に出場できないメンバーにアドバイスや改善点を求め、意見を交換する。そんな真摯な姿勢も、長田野球部のスタイルである。

また、進学校らしく他校のデータ分析にも余念がない。2016年夏は、大堺利紀君という学生マネジャーが主な役割を担っていたが、分析力の高さには思わず舌を巻いた。

学生コーチの大堺君(左)(筆者撮影)

配球や得意コースはもちろん、細かいクセや苦手コース、意識までまとめる分析力は思わず目を見張るものがある。伝統的に、分析班は長田にとってなくてはならない存在でもある。

数字は裏切らない――。接戦を制してきた長田にとって、データは拠り所でもあり、強みにもなっている。

一方で、ベスト8の壁を久しく破れていないことも永井監督にとっては、課題でもあるという。

取材の最後に、強豪校に勝つために必要なことは何か、とストレートな質問をぶつけてみた。

「うーん、こればかりはどこの高校でも同じだと思いますが、明確な答えは出ませんね。それほど、現在の高校野球界において私立と公立では差があるといえます。ただ、その中で自分たちがこれまでやってきた方向性や理論は間違っていなかった、とは感じています。

限られた時間や環境、戦力でどう戦うか。そのための方法論やどこまで自分たちの色を出すのか。私自身も、長田の野球があと一歩という所まで来ているという自負はあります」

練習できないハンデを強みに変えた早大学院

一方で、強くなっていく過程の野球部に在籍していた選手はその要因をどう捉えているのか。私立の早稲田大学高等学院(早大学院)はその例としてわかりやすいはずだ。

2010年頃から急激に力をつけ、2010年夏は西東京大会でベスト4、秋は東京都でベスト8、2011年夏も東京都でベスト8に進出した。今年の夏は、早稲田実業に西東京大会3回戦で敗れた。2009年の段階では、夏は2回戦、秋は1次予選敗退、翌春は1回戦敗退していることを考慮すれば、短期間で劇的にチームが変貌したといえるだろう。

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