カローラとトコットの造形にこもる深い意味

どちらも日本車にはあまりなかった発想だ

実はカローラも実用面での利便性を大事にしたい気持ちがあり、このウエストラインをできるだけ頑張って水平にしようとしたフシがある。反対にルーフとガラスの間にメッキモールが入っているが、こちらではわざわざメッキモールで強調してまで弧を描いたルーフラインで躍動感を表現したかったことがうかがえる。

ただ、どちらのラインもドア後部で曲がり率を急に変えて不自然にRが付いている。ガラスを挟んで上のラインはきれいに流れるルーフラインで躍動感を表現したかったが、後席の乗降性に配慮して妥協した。下のラインは水平なウエストラインによる車両感覚把握性を優先したかったが、躍動感に配慮して妥協した。ちなみにこれらは筆者の想像ではなく、カローラの主査に直接疑問をぶつけたら一度言葉に詰まりながらも認めていた。最後の最後で形而下(けいじか)の道具性と形而上のデザイン性の戦いを妥協で解決したのである。

一方、トコットはドア上部の角がかっちり曲がり、乗降時に頭が入れやすい。その代わりルーフ後端は急角度に落ち込んで空力的に、つまり燃費で不利だし、ピラーとルーフの接合部が鋭角になるので応力が集中しやすく、ボディ剛性でも不利になる。ダイハツのエンジニアは「そこは割り切りです」と言い切った。そして躍動感も諦めている。 ── かと思うと、実はクルマ全体を少し前に傾けて、悪あがきをしている。それは多少の効果がある。

ニーズに応じたデザインにすべき

もちろん形而上と形而下、どちらが偉いという話ではない。時にバランスを取ることも重要だろう。クルマを作る人たちは、ユーザーが求めているものを正確に把握し、プライオリティを付ける決断を下し、ニーズに応じたデザインにすべきということだ。

ここで再び、カローラのノーズを絞ったメリットを追加説明する。実はこのカローラのパワートレインは新世代ユニットであるにも関わらず少し設計思想が古い。パワートレインとタイヤの位置関係は、パワートレインに固有のもので、車種ごとに前後位置の調整はできない。つまりエンジンマウントの位置をエンジニアリング的に必然性で決めたら、前輪の位置は自動的に決まってしまう。

カローラに搭載されたユニットはそのタイヤ位置が現在のトレンドから見ると後ろすぎる。FF車の場合、後ろ寄りになればタイヤハウスが室内に張り出してペダルオフセットでも不利になるし、デザイン的に4輪がしっかり踏ん張っているデザインにしたければタイヤは四隅に追い出したい。

第一、フロントオーバーハングが長いとそれだけで古臭く見える。最初からスペースが限界ギリギリのトコットを見ると、カローラのオーバーハングがどれだけ長いか一目瞭然だ。蛇足だが、カローラでは運転席を後退させることでペダルオフセットを回避しているが、そのしわ寄せでリアシートの膝元スペースが減っているはずだ。少し前までのトヨタならペダルオフセットなどお構いなしに運転席を前に出し、広い後席スペースを訴求していた。ヴィッツなどはまだこの世代のシャシーだ。それを正しく解決したければパワートレーンのタイヤ位置をどうにかしなくてはならない。

写真で歴然なように、真横から見られるとオーバーハングの長さは隠しようがないが、カローラはノーズの絞りをうまく使って斜め前から見た時にはオーバーハングが長く見えないように工夫している。所与の条件の中でデザインのできる範囲で頑張っている点は評価できる。

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