カローラとトコットの造形にこもる深い意味 どちらも日本車にはあまりなかった発想だ

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ダイハツは「ミラジーノ」でも「ミラココア」でも、どうやっても四角いそれを何とか丸く見せようと努力してきたが、そういう無駄なことをやめた。ただ角にRを付けるにとどめた。トコットはそこが新しい。軽自動車が生来持っている四角い形に素直にスタイルを仕立てた。

ではカローラはどうなのか? カローラに求められるのはもっと形而上(けいじじょう)の自動車らしさだ。釣竿は人が握って力を加える根元は太く、それが先に行くほど細くなっているのは応力配分の均等化のためだが、クルマだって同じである。路面からの着力点である4つのタイヤ部分がぐっと幅広く踏ん張り、タイヤから前後は竿先の様に絞られていくべきだ。輪切りにした断面積が徐々に減っていくから均等に力を受け止められる形に見える。そういう物理に即した自然の形にしようと思えば前後を絞りたい。

プリウスと比べる

これまでのトヨタデザインもそういう基本シェイプの形はできていた。4代目に当たる現行「プリウス」の例を見るとわかりやすい。低燃費を宿命付けられたプリウスの場合、後方で気流を乱したくないのでトランクリッドの高さをできる限り持ち上げたい。屋根とトランクリッドの段差を減らしたいのだ。

となればノーズとトランクを結ぶウエストラインはどうしたってくさび状にならざるをえない。燃費性能が重視されるプリウスにとって、機能的要求なので譲ることはできないのだ。しかも厳密に言えばTNGAでエンジン搭載位置を下げたせいでAピラー付け根位置が下がり、くさびはさらに顕著になっている。

現行「プリウス」と比べる(写真:トヨタ)

機能的な正しさはそうなのだが、人間の視覚印象はまた違うからややこしい。走るものとして安定感のある見え方にしたかったら低く幅広くかつ台形にすべきなのだ。鼻先をカローラ同様に平面視で絞れば正面視の縦横比がおかしくなる。絞れば水平方向が短くなるからだ。平べったい形にはどうしてもならない。加えて、後ろへくさび状に上がっていくウエストラインにランプのグラフィックがつられて、つり目になり、余計重心が高く見える。これでは腰高に見えて当然。現行4代目プリウスがカッコ悪いと言われる理由のひとつはそれだ。

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