カローラとトコットの造形にこもる深い意味 どちらも日本車にはあまりなかった発想だ

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リアデザインの話のための写真をちょっと間違えた。実はこれらの写真は別日の試乗会で筆者が自分で撮影したものだが、カローラの真後ろ写真がない。申し訳ないが斜めの写真で勘弁していただきたい。

リアデザイン(筆者撮影)
リアデザイン(筆者撮影)

これらの写真を見て思うのは、軽自動車と登録車のデザインは同じクルマだと考えてはいけないということだ。特にカローラのように立体としての3次元造形が進むとラグビーボール(それは三角錐でも楔形でも構わないが前に向かって進む形)にどうやってランプ類やガラスのグラフィックを馴染ませるかを徹底的に考えなくてはならない。

対してトコットは四角い箱である。だからヘッドランプもテールランプも箱の前後面に取り付けられる。造形的に無理やり角を回り込ませて目の錯覚を利用しようとしても絞りがなさすぎて機能は限定的である。トコットのデザイナーは「どうせ前後の平面につけるなら、懐中電灯と同じ考え方でいいじゃないかと思いました」と言う。中心に発光体があって反射レンズで配光するランプの仕組みならばいちばん効率がいいのは丸型だ。だから前も後ろも丸型で正面を向くデザインに仕上げた。

もうひとつ。面白い共通点がある。この2台、どちらもテールゲートが樹脂製なのだ。トコットは軽さを打ち出す。「女性が開け閉めする時に楽だと好評価されています」と言う。カローラも軽量化がメインだろうが、こちらは造形自由度の高さを生かして丸いテールや彫りの深いディテールを盛り込んでいる。技術的に見れば、抗張力鋼板の普及によって、リアゲートそのものに強度がそれほど求められなくなったことは大きいと思う。

デザインから見える未来

トヨタのデザインは長らく凡庸であることを目指してきた。ひたすらコンサバティブ。しかしTNGA以降、「カッコイイ」を目指せと大号令が掛かった。とは言え、慣れないことは急にできない。プリウスも「C-HR」も、「カムリ」も、とにかく当たり前を抜け出そうともがいた痕跡が多く見受けられた。

プリウスのところで説明したように、筆者からみると機能が求める全体のシェイプはちゃんとしていたが、それを視覚的にまとめる段階であまりにも近くから見すぎていたように思う。ディティールのひとつひとつがそれぞれ全体の形をどう補完するかが置き去りになっていた。カローラではそれが初めてしっかり噛み合った。

一方、軽自動車の世界は、機能が決めた箱型の形をなんとか立派に、あるいは味のあるものに見せようと奮闘してきた。しかし、四角いものを丸く見せる努力がそうそう実を結ぶとは思えない。そういう分をわきまえて、シンプルにものの形に沿った合理的なデザインを行おうという心意気がトコットには感じられる。

どちらも日本車にあまりなかった発想である。この2台の受け止められ方次第で日本車のデザインは大きく変わるかもしれない。筆者はそう思っている。

池田 直渡 グラニテ代表

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いけだ なおと / Naoto Ikeda

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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