ナイキ創業者「日本人は挑戦できる人たちだ」 フィル・ナイトが「日本を熱烈に愛する」理由

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「私は神経質になっていました。もし伊藤さんがNoといえば、そこで会社は倒産でしたから、日商岩井が唯一の望みだったのです。だいたい1週間の出来事でした。伊藤さんは融資に積極的でした。一晩で検討し、そのとき何が必要なのかを知りたがっていました」

そのとき、伊藤氏はナイキを救おうと最も強く望み、そのために動いていた人物だった。にもかかわらず、本では「冷酷な男」と呼ばれた。伊藤氏本人はそう呼ばれることが本心ではないと告げると、ナイト氏は大笑いをした。

「それは悪いことをしましたね。彼は本当に真摯な男だったという意味なんです。彼らとは3年間、非常に近い関係でした。デル・ヘイズ、ボブ・ウッデル、ジェフ・ジョンソン、ロブ・ストラッサーといったチームみんなを知っていた。当時日商岩井は、我々のマネジメントで会社がより成長できると信じていた。だから支えてくれたのです」

そうした黎明期の恩義を、Nissho Iwai Gardenに込めていると、フィル・ナイト氏は語る。

「我々はキャンパス中に、ナイキとともに歴史を作ってきたアスリートの名前を冠するグラウンドを設置しています。日商岩井はナイキの歴史の中で、非常に、非常に重要な位置を占めます。そこで、キャンパスの中心に日本庭園を設置しています」

日本に助けられた男が見る、日本の明るい未来

日本の高度成長期、日本の商社とビジネスパーソンを、現代のようにベンチャー企業が仕組み化される以前から活用し、世界企業へと成長を果たしたナイキ。その一方で、バブル崩壊後の日本の低迷や回復の遅れを見て、いま、どのように感じているのだろうか。

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「私には日本好きというバイアスがあります。日本で仕事をすることも好きですし、日本へ行くことも好きですし、日本のあらゆることが好きです。たしかに、日本経済は低迷していました。しかし私は非常に楽観的に未来を見ています。再び成長していくと思います。

日本のビジネスパーソンがアグレッシブではない、起業家精神がない、リスクを取らない、という見方は、真実ではないと思います。ソニーの盛田昭夫さんのことを、誰もアグレッシブではないとか、起業家精神がないとは言わないでしょう。素晴らしいビジネスパーソンは実際にいるし、日本の未来は十分に明るいと言えます」

日本の若者に対しては、こんなメッセージを述べている。

「私が学んだ人生で最も重要な教訓は、『最後まで挑戦し続けろ』。アメリカのビジネスパーソンにとっても、同じような時期がありました。リスクを取ることを恐れ、失敗を恐れていたのです。しかしその期間は短く、その後、シリコンバレーでは、たとえばテスラはリスクを取っています。これはあらゆる国で見られることです、あらゆる国でリスクテイカーは求められるのです」

そして、こう述べたのだ。「日本の5年後を見ていろよ」と。

ナイト氏は日本の未来を明るく見ている。しかしその期待に応えるために我々が学ぶべきことは、この本に数多く収められているのだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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