東京には「GAFAに勝つ潜在力」がある根本理由 テック4強の経済圏は「現代の護送船団」だ

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もうひとつ、彼に学ぶべきことがあります。彼は電気自動車を販売し、普及させることで、世界のサステナブルなエネルギー利用を進めています。単なる目先の売り上げではなく、本気で社会課題の解決を考えているんです。

このように、先進国課題の解決をゴールに据えることも重要です。起業して一旗あげ、金持ちになりたいという「途上国マインド」だけではこれが難しい。シリコンバレーには、途上国の若者が必死で勉強をして、ものすごい倍率をくぐり抜けて入ってきます。そして、アメリカンドリームを達成する人が現れるわけです。彼らの一部は、例えばビル・ゲイツのように社会課題の解決の重要性に気がつき、投資家としてそれを支えようとします。いまの世界はこのフェーズにあり、課題解決者を求めています。社会課題をテクノロジーで解く、そのためには、複雑な社会課題と先端テクノロジーに近い先進国の起業家育成が重要になると考えています。

さらに言えば、「途上国マインド」自体がなくなっていくと思っています。経済格差がなくなっていくわけですから。いまは、先進国に対する「あこがれ」によるヒエラルキーがあり、それが途上国マインドの源になっていますが、100年後にはアフリカなどの途上国も豊かになり、そのヒエラルキーはなくなっていく。

要するに、単純な問題意識では、SDGs(持続可能な開発目標)にあるような地球規模課題とか、多様な人々の合意形成とか、高度で複雑な社会問題を解くことはできません。

GAFAだっていつまでも先端企業ではいられない

ディープラーニングの発展により、非ITの現場が変わろうとしています。そのさらなる進化には、新しいルールを持つ新しいエコシステムが必要です。GAFAのエコシステムには、新たなエコシステムをもって戦うしかない。私は、IT化の進んでいない、いわゆるレガシーな産業の人々と、AIなどの技術系の人々をどう混ぜて使っていくか、それがヒントになると考えています。

最近は、農業×テクノロジーで「アグリテック」とか、人材育成×テクノロジーで「HRテック」とか、現場とITを混ぜたビジネス領域が出てきていますよね。たとえば建築では、超高層ビルではアジア・中東に及びませんが、日本は地震大国なこともあって、耐震などの建築技術には歴史的に強みがある。そこをどうテクノロジーと掛け合わせて、AI化するか。うまくいけば、それによって世界中の建築技術を一変させることもできるかもしれない。同じことが農業や医療などにも言え、ここに日本のチャンスがあると思います。

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