東京には「GAFAに勝つ潜在力」がある根本理由 テック4強の経済圏は「現代の護送船団」だ
GAFAだって、いつまでも最先端企業ではいられないかもしれません。いまはスタートアップの買収により新しいアイデアを取り入れていますが、必ずしも「混ざって」いるとは限らない。「混ぜる」エコシステムが求められています。
産官学の連携で新たなエコシステム創出を
建築も農業も医療も、AI化、IT化は確実に進んでいきます。つまり淘汰が始まっていきます。ルールメイカーになれない主体は、いずれ潰されていくということです。だから戦いにいかなければなりません。
『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』にも書かれているとおり、GAFAの支配は非ITの領域にも及び始めています。実際、グーグルはトロントの都市をスマートシティとして再開発するプロジェクト(Sidewalk Lab)をひっそりと進めています。そういった、資金を使った幅広な戦略がGAFAの強みですし、怖いところでもありますね。
日本も、どうやってレガシーとITを混ぜるかを考えなければなりません。つまり、大企業とスタートアップなどがうまく混ざらないといけない。しかし、これがうまくいかないことが多い。異分野を混ぜ合わせることができる「インタープリター」が足りないんです。
そうした違う知を混ぜ合わせる「インタープリター」として最適なのが、大学だと思っています。たとえば、東京大学にはあらゆる学部がそろっています。それこそITもあれば、建築も農業も医療もある。教育、宇宙、メディアもあります。どの領域にも、ある程度世界のトップレベルの研究があるんですよ。東京藝術大学も含めれば、本郷近辺には世界的なあらゆる知識のほとんどが集まっています。さらに、そこから20分で霞が関や丸の内、都庁などにアクセスできる。産官学連携を簡単にできる土壌が東京にはあります。そんな場所は、世界的に見ても極めて珍しいんです。
だから、いくつかのコワーキングスペースを作って、いろいろな文脈で異分野の人材が混ざるような仕組みをつくっています。最近では、AI技術のスタートアップに特化したインキュベーションスペース「KERNEL HONGO」やコワーキングスペースなど本郷周辺の拠点を可視化するサイト「Discovering HONGO」の立ち上げにも携わりました。
アメリカでは、ワシントンD.C.とニューヨーク、ボストン、シリコンバレー、それぞれが地理的に離れています。だからこそ優秀な人は産官学を超えて転職します。政治の中心であるワシントンD.C.にいる技術のわかる有識者の多くは、大手民間のGAFAから出向・転職してきた人です。シリコンバレーは飛行機で東海岸まで数時間かかり、東海岸同士でさえ毎日飲みに行って議論できる距離ではない。
それに比べれば、東京には産官学すべてがそろっていますし、金融や芸術、食の先端もある。何でもあるんですよ。これこそが東京、ひいては日本の最大の強みだと考えています。ただ、まだ混ざっておらず、いわば「ある」だけです。これからの課題はそれらの異なる知をうまく混ぜていくことです。現代の護送船団であるGAFAのエコシステムと戦える仕組みづくりに、産官学の力を結集して今後も挑戦していきたいと思っています。
(構成:泉美木蘭)
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