小さな本屋が紀伊國屋本店と勝負できるワケ 弱者の兵法「スモール・スタート」の力

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でも、いかにも個人が好きでやっているブックカフェであるハマハウスでなら、「面白いことやってるな」と思ってもらえます。小さいから、こういったチャレンジができるのです。

このとき僕は、誰もが知っている書店、紀伊國屋書店の梅田本店と勝手に“競争”をしていました。

ハマハウスの中に、たった1冊の本を壁面にぎっしりと陳列(写真:今井康一)

書店として紀伊國屋書店全体とハマハウスを比べると、足元にも及びません。比べるのもおこがましいくらいです。でも、「vs.梅田本店」「『SHOE DOG』一本勝負」などと、勝手な制限を設けることで、もしかすると勝てそうな気がしてきて、やる気が出てきます。

紀伊國屋書店梅田本店で何冊売れたかをウォッチし、ハマハウスではその数を超えようと、イベントをして人を集めるなど、いろいろなことをしました。

その甲斐もあって、小さな書店であるハマハウスで1週間で85冊くらい売ることができました。100冊以上売っていた紀伊國屋書店梅田本店には勝てなかったのですが、それでも制限を設けたおかげで、勝負の土俵には立てていたと思います。「1冊の本だけを売る」という小さいからできるチャレンジはやりがいがあったし、だからこそ「1週間だけで85冊」という販売実績を生むことができました。

脳内チャレンジを、リアルに変える

会社の中にいても、大きな予算のついたビッグプロジェクトには、「だからこそ可能なこと」もあれば、「だからこそできないこと」もあるのは同じでしょう。

そして、小さなプロジェクトで、ビッグプロジェクトに対しては勝ち目がなくても、勝手にルールを設けることで、互角の勝負に持ち込み楽しむことができるのも同じです。

たとえば「デキる係長の1週間の売り上げを俺の1カ月の売り上げが上回ったら勝ち」という楽しみ方をしても、いいじゃないですか。そうした脳内チャレンジをリアルに変えられるのは、小さな場です。

「紀伊國屋書店に勝つ」というのは、果てしなく高い壁を越えるような行為です。普通にやっていたのでは、とてもじゃないけど無理ゲーです。正攻法でハイジャンプで越えようとしても、なかなか難しいと思います。それだけのジャンプ力は、持ち合わせていないからです。

それでも、壁は越えられます。なぜなら僕は「壁には、必ず扉がついている」と決めつけているからです。あとはその「扉」を見つけて開けるだけです。

次ページ「壁には、必ず扉がついている」
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