日本代表、森保監督が目指すべき理想は何か 未来の代表監督を育てる環境は必須のはずだ

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その候補者の名前を挙げるなら、ジュビロ磐田の名波浩監督、ガンバ大阪の宮本恒靖監督らになってくる。名波監督も宮本監督もクラブのレジェンドであり、簡単にチームが手放すとは考えられない。

それでも、東京五輪後にA代表スタッフ入りという長期ビジョンでクラブ側と話し合えば、解決策は見いだせるかもしれない。完全なリーダータイプの名波監督が森保監督の下についてコーチを務めるかどうかも分からないし、宮本監督がどこまで代表での指導に興味を持っているかも定かではないものの、今のところは彼らしか該当者がいないのが現実だ。

数年後には慶応義塾大学ソッカー部の戸田和幸コーチや鈴木隆行氏(現解説者)も成長してくるだろうし、長谷部や川島永嗣(フランス1部・メス)らが欧州で指導者の道を歩み出すかもしれない。一方で、藤田俊哉氏(イングランド2部・リーズユナイテッド強化部)のように、欧州クラブで指導経験を積んだ元日本代表クラスの人材もいる。

こういった国際色豊かな人材を代表チームの指導者へ押し上げていくシステムが、これまでの日本では確立されていなかった。森保体制発足と同時に、4年後、8年後、それ以降の日本代表監督も育っていくような道筋を作ることをそろそろ日本サッカー協会は考えてもいいのではないか。

体制移行がスムーズだったドイツから得られるヒント

海外では、ドイツはすでにそういうシステムで成功を収めている。今回のロシアワールドカップではまさかの1次リーグ敗退の憂き目に遭ったが、2014年ブラジルワールドカップで母国を世界王者へと導いたヨアヒム・レーヴ監督がその象徴的存在だ。

レーヴ監督は2006年に就任する前の2年間、ユルゲン・クリンスマン監督の下でヘッドコーチを務め、チームの戦術決定や戦術トレーニングを主に担った。ドイツ代表でのプレー経験はないが、世界トップリーグの1つであるドイツ・ブンデスリーガ1部のシュツットガルトを躍進させ、トルコ、オーストリアのクラブで指導実績を重ねるなど、豊富な国際経験を武器に代表スタッフ入りし、そこで手腕を磨くことができた。

ドイツが2006年ドイツ・2010年南アフリカ両ワールドカップ3位、ブラジルワールドカップ優勝と約10年間、国際大会で安定した成績を収められたのも、クリンスマン体制からレーヴ体制への移行がスムーズに行ったから。そこは見逃せない点と言っていい。

これまでは、日本サッカーの代表監督が変わるたびに方向性が変化し、日本らしいスタイルが何なのかハッキリしなかった。それが代表発展の妨げになっていたのも事実だ。

日本サッカー協会の田嶋幸三会長は先の会見で「Japan's Way(日本らしいサッカー)」を繰り返し強調していたが、それを大きく花開かせるためにも、森保監督以降も安定的に指揮官を送り出せる体制をいち早く築き上げるべき。

新生日本代表のコーチングスタッフに誰が入ることになるのか、未来の代表監督を育てる体制は実現できるのか。その動向を興味深く見守っていきたい。

(文中一部敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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