月収12万円で働く39歳男性司書の矜持と貧苦 勤続15年でも給与水準は採用時からほぼ同じ

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今、ショウタさんが心配しているのは、2020年4月1日から始まる「会計年度任用職員」制度だ。これにより、彼を含む嘱託や臨時、非常勤といった非正規公務員のほとんどが会計年度任用職員へと移行される。

文字どおり会計年度ごとの任用になるので、事実上「毎年解雇」になるうえ、任用のたびに試用期間を経なくてはならない。雇用条件によっては、大幅な賃下げになる職員もいる。

「この問題に対処するには、正規職員の労働組合とも連携していく必要があると思うのですが……」とショウタさん。今のところ、自治労系労組からの歩み寄りはないし、ユニオンの側も過去のわだかまりを払拭しきれずにいる状態だという。

待遇だけ見ると「失敗」だが…

図書館内を案内してくれたショウタさんはとても誇らしげだった。しかし、彼が正規採用される道はほぼ閉ざされたといっていい。今後、待遇が劇的に改善されることもないだろう。司書という仕事を選んだことについて、彼はこう語る。

「待遇だけ見ると、どうみても失敗。それでも、司書の仕事は天職だと思っています」

ふと、かつて司馬遼太郎が「図書館司書には、その自治体の最高レベルの職員を充てるべきだ」と語っていたという話を思い出した。出典を知りたくてインターネットを検索したが、どうにも見つけることができなかった。

だから、取材後、ショウタさんにレファレンスをお願いした。司馬はいつ、どこで、この話をしたのか、あるいはそれは私の記憶違いなのか――。

ほどなくして、ショウタさんからメールが来た。

司馬遼太郎のインタビューが掲載された週刊朝日増刊号(筆者撮影)

「もとは1971年の大阪市立図書館報に載った司馬さんのインタビュー『図書館と歩んだ私の青春』です。『週刊朝日増刊12/10号』(1997年)の『司馬遼太郎が語る日本 未公開講演録愛蔵版3』の304~305ページに載っています。(雑誌は)すでに絶版ですが、うちは所蔵しています。ぜひ参考にしてください」

図書館司書の底力である。

あらためて雑誌を読んだところ、司馬は正確にはこう語っていた。

「自治体はまず最初に図書館をつくるくらいの気概を持たなければなりません。~中略~まず図書館を立派にしなければ街という感じがしませんね。それと、その市における最高の官吏に司書をやっていただけるといい」

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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