月収12万円で働く39歳男性司書の矜持と貧苦

勤続15年でも給与水準は採用時からほぼ同じ

また、芥川賞を受賞した本だと言われたが、断片的な内容などから推測して直木賞作品も併せて提示したところ、その中に利用者が求める本があったこともある。

「(利用者が)希望する本がない場合でも、『代わりにこんな本はどうですか、こんな資料ならありますよ』と提案することも、大切な仕事です」。人と本が出合う――。そうした機会を提供することが、司書の仕事の醍醐味だという。

しかし、すべての司書がこうした水準に達しているわけではない。ショウタさんは勤続15年。日本図書館協会が主催する研修や、知り合いの司書たちによる勉強会に参加するなどして、自分なりに研鑚を積んできた自負もある。

その自負とは裏腹に、ショウタさんは1年ごとに契約更新を繰り返す嘱託職員。週4日勤務で、毎月の手取り額はわずか12万円ほどだ。給与水準は採用時からほとんど変わっていない。自治体の正規職員には支給されるボーナスも退職金もなし。健康診断の費用も自己負担だ。

「1年目の新人司書と、ベテランでは当然、スキルに違いがあります。でも給与は同じ。お金だけの問題だけではなく、努力や経験がなにひとつ評価されないことが残念です」

ショウタさんは自嘲気味に続ける。「僕の場合、持ち家に母と同居している“パラサイトシングル”だからなんとか生活できている。一人暮らしや結婚なんて、どこの別世界の話?という感じです」。

いずれは正規雇用の司書になれると考えていた

物心ついたとき、すでに両親は離婚。ショウタさんを引き取った母親は正社員として働いており、収入は安定していた。中学、高校は私立の有名進学校に進むこともできたという。

「頑張ってくれた母や、忙しい母に代わって僕を育ててくれた祖母に感謝しています。父も誕生日には本を贈ってくれましたし、(父を)恨んだことはありません」

国立大学を卒業後、地元の公立図書館に採用されたときは、非正規公務員とはいえ、念願の司書になれるという喜びで、待遇などは二の次だった。追って採用試験に合格すれば、いずれは正規雇用の司書になれると考えていたという。

しかし、現実は厳しかった。地元にこだわらず、全国の自治体で正規職員が募集されるたびに試験を受けたが、いずれも不合格。多くの自治体が30歳以下、35歳以下など受験に年齢制限を設けており、ぎりぎりまで挑戦を続けたが、ついに希望はかなわなかった。

文部科学省の社会教育調査によると、ショウタさんが働き始めた当時、全国の各自治体で採用された司書のうち、正規公務員の割合は7割近かった。彼がいつか正規採用されると期待したのも無理のない話である。しかし、その後、正規雇用の司書は減り続け、2015年度には29.6%にまで落ち込んだ。ここ数年、正規雇用の募集人員は全国で年間数十件にすぎないといわれる。

現在、ショウタさんの職場は8割が非正規公務員。このうち半数近くが司書資格を持っている。正規公務員の中にも司書はいるが、多くは3年ほどで異動していくという。

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