外食・小売りが苦悩、「軽減税率」導入の波紋 レジ改修や価格設定など課題は山積している
接客時の混乱を懸念する声も多い。別の外食チェーン幹部は「フードコートで(税率の低い)持ち帰り注文をした客が、テーブルに座って飲食することがありうる」と話す。接客時に店内飲食か持ち帰りかを確認する必要が生じ、接客の手間が増える。「クレームの原因にもなりそうだ。面倒な接客を嫌って、これまで以上に人手を集めることが難しくなる」(同)。
券売機対応も課題
人手不足対策や現場の負担軽減の観点から導入が進む券売機についても、問題が指摘されている。現在、外食チェーンなどで使われる券売機は10円単位のものが主流で、1円玉や5円玉に対応できていないものが多い。ただ、同じ本体価格で税率8%と10%に対応する場合、ほぼ確実に1円単位の金額が発生する。
そのため、業界内からは「本体価格を持ち帰りと店内飲食で別々に設定して、税込み価格を統一する選択肢もある」(前出の牛丼チェーン関係者)という声も聞こえてくる。仮に持ち帰りの本体価格を306円、店内飲食を300円とした場合、税込み価格はいずれも330円となる。10円単位の券売機でも対応が可能というわけだ。
こうした価格設定は国税庁も容認している。税制に詳しい東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹は「価格設定は本来店の自由であるべき」と前置きしたうえで、「税込み価格を同じにしても、不正は生じうる」と指摘する。軽減税率を導入しているドイツでは、税率の低い持ち帰りの割合を店側が実際より過大に申告することで、納税額を抑える問題が発生している。
懸念を示すのは外食企業だけではない。スーパーなどの小売り事業者は8%と10%の商品を分別できるよう受発注システムやレジの改修を進める必要がある。中でも不安視されるのがイートインコーナーの扱いだ。
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