一汁三菜「おふくろの味」には幻想がいっぱい

「おかずの数」プレッシャーはどこからくるか

学校のカフェテリアで買うものはもう少しマシかと思って買ってみたが、脂ぎったフライドポテトにチーズがどろりとかけてあるものと、やはり甘いジュースだけという感じ。え? ポテトがメイン? というかポテトだけ?(ポテトは彼らにとってれっきとした野菜だ)と衝撃を受けた。それ以来、私が毎朝少し早く起きてレタス1枚とハムが入ったサンドウイッチと果物を5歳、8歳の分も合わせて3人分パックするのが日課になった。

ひるがえって日本。もちろん給食などの食育のレベルの高さは子どもをもつ親としてもありがたいことだが、キャラ弁に象徴されるように、家庭で作られるものまで手の込んでいること込んでいること。SNSに投稿するような料理は上手にできたときに投稿していたり、得意な人がやっているのだとは思うが、時に「愛情」とともに語られ、母・妻たちにプレッシャーをかける。

私は数年にわたって日本の家事代行の取材をしているが、この数年で共働き子育て家庭にヒットしたのがタスカジの作り置き料理代行だ。タスカジというのはCtoCの家事代行サービスで、たとえば整理整頓が得意、英語が話せるなど個性を生かした家事代行の提供者を利用者が指名して来てもらうことができるプラットフォームだ。

この中で、元シェフだった、家庭料理が得意などの“タスカジさん”がテレビで「伝説の家政婦」として取り上げられてレシピ本を出版するなど、大変注目されている。タスカジさんに来てもらった3時間などで15品などの作り置き料理などをしてもらい、1週間それで食いつなぐという形でワーキングマザーなどが利用している。利用登録者は3万8000人で掃除の依頼がもっとも多いが、今年6月実績で利用の44%が作り置きの依頼(前年同月は31%)になっているという。

初期の頃にわが家も使ったことがあるのだが(たいへん美味だった15品程度を子どもがまったく食べず、結局私だけで消化することになったので一度で終了したが)、このサービスが広がる背景には、「誰かの手作り」「家で食べる」ことに対する規範の強さがあると思う。

母の手によって作られたものでないといけない、というところを乗り越えただけでも前進はしているものの、外食や外で買ってきたものだけで食事を済ませることに対する罪悪感におカネを払っているように感じられるのだ。

「残念和食」?「一汁三菜」はもてなし料理

一方で、日本の家庭では食文化が崩れてきているという指摘もある。食と現代家族の生活の調査を続けている岩村暢子さんは『残念和食にもワケがある』(2017年、中央公論新社)で家庭での和食が減り、崩れている実態を写真とともに分析している。

この本自体は淡々と実態を描いており、たとえば1品ずつ適切な和食器に盛り付けるのではなく、お子様ランチに使用するような仕切りのある1プレート皿を大人も含めて利用する家庭が見られる。それには「洗い物が減るから」「子どもが自分の皿の分は食べきった感が出るから」など、現代家庭なりの“ワケ”がある。

よくかまないために甘みが出てこず白いご飯が苦手、流し込むために麦茶が必須、味噌汁では流し込むのにすっきりしないので好まれない……などのつながっている現象もみられ、背景には食事そのものやその準備、片付けの時間を節約して合理化させたい忙しい家族の様相がかいまみえる。

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