経験者が語る、「ベンチャー企業で働く」損得 こんなタイプなら、入るのをやめた方がいい

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しかし、28歳という年齢、大学院を卒業してから2年半のブランク、実務経験なしという条件がネックとなり、20~30社受けても、希望する条件を叶えられるような企業からの内定は得られなかった。特に大企業は実務経験がないと門前払いといった状況だ。

そんなときに目にとまったのが、ベンチャー企業の法務ポジションの募集だ。まだ設立したてのベンチャー企業だったこともあり、法務を専業で担当している社員はいなかった。

「失礼な話ですが、当時の自分の知識レベルでもできる仕事がかなりあると思いました。また、業務未経験の自分でも対応できる業務があるだけでなく、将来的にはIPO(新規株式公開)を目指していることもあり、大企業でも経験できない難易度の高い業務も経験ができると感じました」と、篠原さん。

ちなみに、IPOを目指している企業は、その準備・審査の過程で求められる法令順守の水準が通常の非上場企業と比べて、格段に高くなる。会社法・労働法などの分野がその代表例で、それに伴う法務関連の業務も多く発生する。

「社長からも会社の法務を任せたいと言ってもらえましたし、これから事業を積極的に展開していく勢いを感じることができました。この環境であれば、自分自身の市場価値を高められるだけでなく、ゼロからイチのものを作れる面白みがあると思って入社を決めました」(篠原さん)

難易度の高い仕事やポジション外の仕事も任される

入社当初は、採用ポジション通り法務を担当していたが、法務のポジションで働くのは新人の篠原さんだけ。そのため、今まで学んできた知識を活かして、法律を順守できるような会社の仕組みや制度を、1つずつ整えていったという。

しばらくすると、法務だけでなく、人事労務や経営管理まで篠原さんが対応するようになる。部下の採用面接も行い、そのマネジメントも担うことになった。

「大企業では経験ができないくらいのスピードで、業務範囲が拡大していきました。たった3年半で法務だけでなく人事労務や経営管理を経験することができましたし、さらに、入社2年目では自身が採用した部下も付き、マネジメント業務も経験できました」と篠原さんは振り返る。また、仕事柄、経営陣とのやり取りも多いため、経営トップの考え方や、どうコミュニケーションを取れば良いか、そうしたことを学ぶことができたことも、大きな収穫だったという。

篠原さんの市場価値は就職前と比べると、段違いに上昇したと言えるだろう。実際に在籍3年半で、年収も入社当初の倍になっていたそうだ。

ここまでの話を聞くと、なぜ篠原さんが転職をするのかがわからない、と感じるだろう。いったい何が理由でこれだけメリットを感じられる環境を変えようと思ったのか? 篠原さんが挙げた転職理由は次の3点だった。

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