参議院「定数6増」はいくらなんでも酷すぎる 自民党の利益を守るためだけの「改革」だ

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「(いまの選挙制度は)合憲なのだから、急ぐことはない。参議院選挙は2回で1回なのだから、その間に抜本改革をすべきだ」

7月9日に開かれた倫選特で脇雅史元自民党参議院幹事長は、かつての古巣に苦言を呈した。脇氏は参議院選挙制度協議会座長を務め、10選挙区を5合区にすることで格差を1.83にする私案をまとめた。

「一般の人に考えさせたら、自民党のような案が出てくるはずがない。選挙制度は国民のためにあるのであって、自民党のためではない」

なるほど、自民党が合区対象区からの候補を比例区の「特別枠」に入れた場合、彼らは必ず当選する。だがこれらの区の議席は、必ず自民党が獲得してきたとは限らない。たとえば鳥取選挙区だが、1995年の参議院選では自民党推薦の小野ヤスシ氏が出馬したが無所属の常田享詳氏が当選し、2007年には民主党の川上義博氏が当選している。また同時に野党の「特別枠」で合区対象区の候補が当選した場合も当選する。こうして合区は事実上、代表者を2名出すことになってしまいかねない。

この時期になぜ国会議員を6人増やすのか

「自然災害でお金がこれからもいるのに、なぜ国会議員を6人増やして(1人当たり)年間1億円の経費を渡すのか。腹が立って仕方がない。人口が減っているんだから増やす必要はない。自分たちの党利党略じゃないか」

おおさか維新の会の松井一郎大阪府知事が7月10日の会見で記者団に話した内容が、今回の参議院選挙制度改革案について国民の感じ取る素直な印象だろう。自民党の岡田直樹参議院議員は6議席増員で行政の強化を図る一方で、国民に新たな負担がないようにすると述べたが、そもそもそうした行政改革は増員がなくても実行すべきことだ。

2000年に、名簿上位に掲載されるために大手マンション販売会社から巨額の献金を受け取り、それを幽霊党員の党費として上納していた久世公堯議員の事件があった。この事件は、参議院比例選挙において非拘束名簿式が導入される契機になった。今回、拘束名簿式を導入する「特別枠」は増員の4議席に限定されるとは限らず、事実上の拘束名簿式の復活となってしまいかねない。

「理性の府」は死んでしまったのだろうか。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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