映画の「日活」波乱の100年を経た現在の姿 映画製作にこだわり続け、国内外で高い評価

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2005年、社長に就任した佐藤直樹氏は、「世界中の人々に面白い作品を届ける」という企業理念を掲げ、「日本の外へ。映画の外へ。世界中のあらゆるデバイスで日活のタイトルを提供する」という考えを社員に共有している。

16代目となる佐藤直樹社長(写真:筆者撮影)

近年は、インターネットの普及や娯楽の多様化などから、顧客や制作現場など、映像コンテンツ業界を取り巻く環境が大きく様変わりした。

「小売・流通業界がネット通販との競争にさらされたように、ひとつの産業が丸ごとその在り方を変えなければならない時代に突入している」と佐藤社長は日活を取り巻く環境について分析する。

タイではテレビ番組を制作

現在、Amazonオリジナルドラマ『紺田照の合法レシピ』(3月6日配信)や体験型ファミリー映画『映画 おかあさんといっしょ はじめての大冒険』(9月7日公開)といった新たな映像製作に取組んでいる。

また、海外との共同製作となる『海を駆ける』(5月26日公開)やタイ企業との合弁で設立した制作プロダクション「カンタナ ジャパン」でのTV番組制作など、海外に目を向けたチャレンジも続けている。先般、カンタナが制作したタイ地上波でのクイズバラエティー番組『Wezaa CoolJapan(ウィザークールジャパン)』が、同時間帯での視聴率トップを記録したという。

一方で、佐藤社長の掲げる理念には「日活が映画を作り続けて行くために」という枕詞がある。他の映像事業領域へ意識を向けながらも、日活の中心には「映画」があることに変わりはない。マンガ原作でブームを巻き起こした『DEATH NOTE』シリーズ(2006年~2008年、前述の金子、中田両氏が監督)や日本アカデミー賞で10冠を受賞した『八日目の蝉』(2011年、成島出監督)は日活作品だ。

昨年は『散歩する侵略者』(黒沢清監督)、主演の蒼井優が日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した『彼女がその名を知らない鳥たち』(白石和彌監督)などが国内外で高い評価を受け、こだわり続けた映画製作事業が今でも日活の根幹として貫かれている。

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