「財政破綻の夕張」で起きた地域医療の現実

今、私たちが夕張市民から学ぶべき事は何か

これは、北海道だけの傾向ではありません。全国的にもそうですし、他の先進国でもほぼまったく同じように高齢者1人あたりの医療費は右肩上がりに増えています。

ただ、たとえ医療費が安くなっても、そのために市民の病気が増えたり、手遅れになる人が増えてしまったり、命を落とすような人が増えてしまったら、それはまったくいいことではありません。

では、病院閉鎖後に市民の健康はどうなったのでしょうか。病死者が山ほど増えたりはしませんでした。

夕張市民の死亡総数と死亡率を見てみると、実は病院閉鎖前後でほとんど変化がありません。そのグラフが下記です。

(グラフ:『医療経済の嘘』より森田医師作成)

上が死亡総数つまり実数の推移で、下が男女別の死亡率の推移です。

こう言うと、「高齢者とか重い病気の人が財政破綻で市外に引っ越したからでは?」という指摘をいただくのですが、私も当初その可能性を考えました。

医療がなくなって不安なのは、高齢の方や重い病気の方々ですから。でも、いろいろデータを見てみるとそうでもなさそうでした。

というのは、まず人口動態を見ると、実は高齢者人口はまったく減っていません。財政破綻・病院閉鎖のあとも変わらず一貫して増えているのです。

また、医療が頻繁に必要な病気の患者さんの代表格が人工透析の患者さんですが、病院閉鎖で市内では人工透析もできなくなったので、市外へ引っ越す透析患者さんが多いかと思ったのですが、調べたら人工透析の患者さんも減っていなかった。

ですので、死亡数(率)が変わらなかったことや医療費が減ったことを、人口移動で説明するのは無理があります。

夕張市で増えた「死因」とは?

さらに死因別で見ると、実は男女ともに、死因第1位のガン、2位の心疾患、3位の肺炎がおおむね低下しています。

(グラフ:『医療経済の嘘』より森田医師作成)

ですが、よく考えると計算が合いません。

死因上位3疾患だけでも死亡総数の相当の割合を占めるはずですから、この3疾患の死亡率がこれだけ下がっているのに総死亡率が横ばいなら、何かの死亡率が増えていなければ数が合いませんよね。実は、死亡率が増えているものがあるのです。それは「老衰」です。

老衰は病気ではなく、自然に命が枯れていく「状態」です。でも、国で決められた死亡診断書の「死因の種類」の1番には、「病死及び自然死」と書かれています。

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