なぜ米国の株価は前週末持ち直したのか
米国政府は7月6日(金)に予定通り、中国からの340億ドルに相当する輸入に対して追加関税を発動した。米国の株価は独立記念日明けの5日(木)から持ち直し気味に推移したが、これを「意外だ」という声を聞く。
しかし、追加関税の発動前まで、株価が楽観に包まれて上昇し続けていたのであれば別だが、すでに「貿易戦争」を懸念して下げていたのだから、「悪材料がいったん実現した」として反発をみせても、何の不思議もない。
実際、世界の株価の調整色が強まったきっかけは、6月18日(月)に、ドナルド・トランプ大統領が「2000億ドル分の対中輸入に対して関税を追加することを検討している」、と表明したことであった。本当に2000億ドル分すべてやるかどうかは疑念の声が強く、6月後半の株価調整がその悪影響を100%織り込んでいるわけはないだろう。
それでも、すでに市場参加者のほとんどは「今回の340億ドル分に加え、近いうちに残り160億ドル分が発動された後も、何らかの対中制裁の追加があるだろう」、と懸念している。そうした追加懸念も含めての6月後半の株価調整であったろうから、追加関税発動がさらなる悪材料にならなかったというのは自然だ。
また、追加関税を発動した瞬間に世界経済が悪化するわけではない。ジェローム・パウエル米連銀議長は、6月13日のFOMC(米公開市場委員会)後の記者会見で、通商問題について「企業が投資や新規雇用を中断しているという報告も出始めている」とは述べたが、同時に「景気は強く、今のところそうした事実(投資や雇用への悪影響)は数字には表れていない。通商問題はあくまでも現時点ではリスクというところにとどめたい」とも語っている。
先週発表された米国の6月分の主な経済指標についても、自動車販売台数、ISM製造業及び非製造業指数、雇用統計のなかの非農業部門雇用者数と、ことごとく強かった(失業率は悪化したが、その前の4・5月分の低下が「できすぎ」だった感がある)。
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