「発達障害の子」に悩む親が知りたい超基本 「ぐずる」「こだわる」「怠ける」も症状のひとつ

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3種類に分けて紹介しましたが、この中の1つだけに悩んでいる子どもは少なく、それぞれの症状を少しずつ持ち合わせているケースがほとんどです。そのため、発達障害の症状は子どもによって本当にさまざまだといえます。

あなたの子どもが育てづらい理由

発達障害というと病院で診断される重い症状だけを想像するかもしれませんが、実は「ちょっと育てにくい子」の中にも発達障害の特性を持っている子たちがいます。そのような子たちは「じっとできない」などの発達障害特有の症状はあるものの、社会に適応できないほどではないため、病院などではっきりとした診断がつきません。このような子どもたちは「発達障害のグレーゾーン」と呼ばれます。

これまで私が受けてきた相談から考えると、診断がつく発達障害の子よりも、グレーゾーンの子のほうが多いように感じます。あくまで経験による推測値ですが、グレーゾーンの子は、1クラスに10%ぐらいの割合でいるのではないでしょうか。

グレーゾーンの子どもたちは、日常生活を送るのに問題ない知能を持っていますが、行動に特性があるため、学校生活や集団の中で苦労することが多々あります。さらに、グレーゾーンは重度の発達障害に比べると、症状が軽いために「怠けている子」「親のしつけがなってない子」などの誤解も受けやすいのです。周囲から症状が見えにくいからこそ大変なのが、グレーゾーンだといえるでしょう。

グレーゾーンでは、特性が少し「変わったかたち」で出ることもあります。たとえば、私のもとに相談に来ていた注意欠陥多動性障害と自閉症スペクトラム障害の特性を少しずつ併せ持つグレーゾーンの男の子の場合。

この子の症状の1つに、ファミリーレストランなどの外食で、一緒にいる人同士の注文が同じになることに「強い嫌悪感」を示すというものがありました。つまり、お母さん、お父さん、その男の子、弟の4人でファミリーレストランに行ったときに、お母さんと弟の注文するものが同じになると、途端に機嫌が悪くなって怒りだし、弟をたたいたり、メニューを変えるまでぐずるということがよくあったのです。

これは、一見、自分勝手なワガママのようにしか見えませんが、立派なグレーゾーンの特性。自閉症スペクトラム障害の「独特のこだわり(この場合はメニューが一緒ではいけないという独自ルール)」と、注意欠陥多動性障害の「衝動性」が合わさって急に怒り出すという行動が現れたと考えられます。

グレーゾーンでは、発達障害の代表的な特性が薄まるだけでなく、このように、特性が少しかたちを変えて出てくることもあるのです。なんでもかんでも発達障害だと考え、必要以上に過敏になることはありませんが、子育ての中で「何かおかしいな」と思うことがあれば、発達障害という可能性も考えていいでしょう。

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