「九条ねぎ」の躍進は1冊の雑誌から始まった 年商10億円を超えた「こと京都」の軌跡

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ねぎの農作業は、畑が4割、調整が6割と言われます。「調整」というのは、形を揃え、汚れた葉をむしり、きれいに洗って、袋詰めにする工程のことで、実はねぎ農家にとって大きな負担です。そして食の安全が問われ、この工程の重要さはさらに増しています。

この面倒な作業を「こと京都」が全て引き受ける、と言いました。

翌年、HACCAP(食品の製造工程における衛生、品質を管理するシステム)対応の加工場が完成予定で、その点を強調しました。そして販売ルートはすでに構築済みです。「売るのは私たちに任せてください」とも断言しました。

メンバーは40人に増加

力強い言葉に促され、今や、メンバーも40人にまで増加しました。山田社長はこれからも、九条ねぎの安定供給を目指し、さらに会員を増やしていくつもりです。

農林水産大臣賞を受賞した(写真:こと京都)

こうした一連の経営努力に対し、2013年12月、「第1回6次産業化推進シンポジウム」の席上で、同社は農林水産大臣賞を受賞します。「6次産業化」は、東大名誉教授の今村奈良臣(ならおみ)氏が提唱し、第1次産業(農林水産業)の「1」に、第2次産業(製品の加工)の「2」と第3次産業(流通・販売)の「3」までを足して「6」となることから名づけられました。

農林水産業者が、従来、第2次、第3次産業事業者に回っていた加工費や流通マージンを獲得することで、自らの付加価値を向上させ、所得のアップや雇用創出につなげることを目指しています。まさに「こと京都」の活動は、その代表例とされたのです。

受賞のポイントは、次のように記されています(一部略)。

①京都特産の九条ねぎを食材として利用しやすいようにカットし、青ねぎの食習慣が少ない関東でラーメンの食材としての需要を新たに創出したこと

②カットねぎに新鮮というバリューを付加するとともに、他の九条ねぎ生産者との連携による商品の周年安定供給を実現し、販路を開拓したこと

まさに山田社長の20年来の努力を簡潔に顕彰した言葉だと思います。

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