北朝鮮「秘密の核施設」情報がダダ漏れた事情 トランプ氏は米朝首脳会談前に知っていた?
北朝鮮に存在するウラン濃縮施設としては、核物理学の権威、ジークフリード・ヘッカー米ロスアラモス国立研究所元所長が2010年に視察した寧辺(ニョンビョン)が有名だ。寧辺は北朝鮮が公式に存在を認めている唯一のウラン濃縮施設である。
北朝鮮はこれに加えて、「カンソン」と呼ばれる秘密のウラン濃縮施設をかなり前から稼働させている。米情報機関による最新の分析では、カンソンのウラン濃縮能力は寧辺の推定2倍。同施設はさらに、2009年に寧辺にウラン濃縮施設が作られるよりも前に立ち上げられた可能性がある。
秘密施設の存在は暗黙の了解になっていた
実は、これはそれほど驚くような情報ではない。米国防総省の国防情報局(DIA)と米国家地球空間情報局(NGA)が昨年行った共同分析では、北朝鮮は60発の核弾頭を製造するのに十分な核物質を備蓄しているだけでなく、毎年12発分のペースで核物質の備蓄を積み上げているとされた。これだけの量の高濃縮ウランを製造するには寧辺の生産能力だけでは足りず、こうした推計が出た時点ですでに秘密施設の存在は暗黙の了解になっていた。
NBCは最新の機密情報を基に、さらに別の秘密施設が存在すると報じている。情報機関の分析について筆者が得ている最新の情報では、場所、生産能力も含めて、寧辺、カンソンに続く、この第3のウラン濃縮施設についてわかっていることはほとんどない。
北朝鮮がウラン濃縮を続行していることは、金氏が今年元旦の「新年の辞」で核弾頭や弾道ミサイルの大量生産を指示したことに対応している。金氏はこのとき、次のように述べた。「核兵器研究部門とロケット産業は核弾頭および弾道ミサイルを大量生産すること。核兵器の攻撃力と信頼性は完全に証明された。実戦投入への取り組みに拍車をかけよ」。
「朝鮮半島の非核化」をうたった板門店宣言、「完全な非核化」を確認した米朝共同声明、そして、核と経済の「並進路線」を転換し経済一本に集中するとした4月の朝鮮労働党大会――金氏が今年に入ってから見せてきた言動は何ひとつとして、ウラン濃縮活動の停止には結び付いていない。