北朝鮮「秘密の核施設」情報がダダ漏れた事情 トランプ氏は米朝首脳会談前に知っていた?

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だが、カンソンに加え、さらに別の秘密施設の存在までもが世に知れ渡ったことで、北朝鮮には一段と強い圧力が加わることになる。米国との交渉では、これらの秘密施設についてもテーブルに載せざるをえなくなるだろう。

トランプ氏は米朝首脳会談の成果を自画自賛しているが、譲歩したのは北朝鮮ではなく、米韓の2カ国だったことは明白だ。トランプ氏は米韓合同軍事演習の中止を表明したが、これに対して北朝鮮が差し出したのは、いかようにでも反故にできる、うわべだけの約束にすぎない。

トランプは沈黙を決め込んでいる

北朝鮮は豊渓里(プンゲリ)にある地下核実験場の坑道を爆破し、入り口を封鎖したが、核実験場の破壊は検証されておらず、おそらく復活させることも可能だ。また、北朝鮮は西海(ソヘ)衛星発射場にあるミサイルエンジン試験場の解体をトランプ氏に約束したとされるが、米韓合同軍事演習を中止するという決断とはまったく釣り合わない。

米国の情報機関は北朝鮮の秘密施設にスポットライトを当てることで、ホワイトハウスの足元に火を放ち、非核化の問題に真剣に取り組むようプレッシャーをかけているのだ。

本稿執筆時点では、トランプ氏はNBCの報道について公式にコメントしていない。「フェイクニュース」と呼んであざ笑うか、情報を漏らした人間を捜し出すと大っぴらに宣言するつもりかもしれない。だが、このような不都合な真実に対しては、おそらく黙殺を決め込むに違いない。

NBCが報じたことの多くは、米朝首脳会談の前の段階でトランプ氏に知らされていたはずだからだ。だが、それでも、こうした機密情報は首脳会談の結果にはほとんど影響を与えなかったし、北朝鮮の脅威に対するトランプ氏の楽観的なメッセージを変えることもできなかった。

トランプ政権の中で何かが変わって、北朝鮮の核施設に対する事実を直視できるようになる日まで、金氏の核の備蓄は増え続けることになる。

(文:アンキット・パンダ)

筆者のアンキット・パンダ氏は米国科学者連盟(FAS)の非常勤シニアフェローで、国際安全保障問題の分析を専門とする。米『ディプロマット』誌のシニアエディター。
「北朝鮮ニュース」 編集部

NK news(北朝鮮ニュース)」は、北朝鮮に焦点を当てた独立した民間ニュースサービス。このサービスは2010年4月に設立され、ワシントンDC、ソウル、ロンドンにスタッフがいる。日本での翻訳・配信は東洋経済オンラインが独占的に行っている(2018年4月〜)。

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