日本人の英語力が一向に上達しない根本原因 「英語を勉強」ではなく、「英語で勉強」せよ
英語教育の最先端の方法論に「内容言語統合型学習」(CLIL=Content and Language Integrated Learning=クリル)という教育法がある。
ここでいう「内容」とは、社会や理科などの一般教科や、環境問題や人権といった科目横断型テーマのことであり、「言語」とは外国語(実質的には英語)のことを指す。
ただ、統合されるのはこの2つだけではない。思考力(特に分析・評価・創造といった高次思考力)と文化(共同学習および国際意識)も加わる。
つまり、内容(Content)、言語(Communication)、思考(Cognition)、文化(Culture)という「4つのC」を意図的かつ有機的に組み合わせて授業を設計し、世界で共有されている効果的指導技法を駆使して教える。
そうすることで、高密度で高品質な教育を実現するのである。
日本でも起きつつある英語教育の新潮流
具体例として、高校の「科学と人間生活」という科目から、「熱の伝わり方」を取り上げよう。
生徒はまず、伝導(接触による熱移動)、対流(水や空気の加熱による熱移動)、放射(遠赤外線による熱移動)という3つの熱の伝わり方について、英語で書かれた教科書を読み、英語での説明を聞いて理解する。
次に、さまざまな暖房器具(電気カーペット、床暖房、エアコン、灯油ファンヒーター、電気ストーブ、薪ストーブなど)がどの熱移動の仕組みを利用しているかを考え、インターネットから集めたデータ(購入費、高熱費、暖房速度、CO2排出量、室内乾燥度など)を基に、長所と短所をグループで話し合う。
授業の最後では、家のどの部屋にどの暖房器具がふさわしいかを、理由とともに英語で発表する。
このような教育法は、今世紀に入ってからのヨーロッパで広く普及した。背景には、域内の交流促進により、政治・経済・文化を活発化するEUの言語政策もあるが、教師自身によるより良き教育の追求といった草の根による広がりもある。
同じことが今、日本でも起きつつある。
後編では、CLILという英語教育が優れている理由に触れたうえで、「他の教科を英語で学ぶ意味がわからない」という批判にも答える。
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