18歳以下の女性を狙う卑劣な人身取引の実態 日本にも児童労働の深刻な問題が現実にある
ブラックバイトの事例3「深夜労働」
これは高校生の事案が多いのですが、18歳未満の深夜労働は法律で禁止されています。シフト上は夜10時まででも、10時になるとタイムカードを押してと言われる、もしくは勝手に押されるというケースが。その後に残業をさせられ、残業代は未払いで、しかも記録としては法律違反していないように見せかけるという手法です。
ブラックバイトの事例4「戦力化」
これは有名カフェチェーンのある出来事なのですが、ほぼ学生バイトで店舗運営をしていて、ほぼ店長もいないというところがありました。店長は何店舗も掛け持ちしている状態で、「店長がいない間は時間帯責任者ですよ」と言われ、アルバイトが商品の発注のような店長が行う業務をしないといけないと。また、お客様からクレームがあったら店として責任を取って謝罪をさせられたということもありました。また、そこで雇い止めの相談があったのですが、会社側との交渉で最終的に出てきた会社の言い分が「カフェなので、女性は鮮度が大事。だから定期的に変えなければならない。だから辞めてもらう」という内容でした。典型的なブラックバイトだと思います。
法外な損害賠償を請求された
ブラックバイトの事例5「損害賠償」
これは家庭教師のアルバイトのケースですが、家庭教師先で遅刻するということが何度かあり、それで契約が切れてしまったということで、「切れた契約分が60万円あるので、それはあなたの責任で支払ってください」という法外な損害賠償を請求されたということがありました。また、コンビニバイトの大学生が1人で店舗を回しており、あまりにも手が足りないということで30分店を閉めて品物を整えた時に、それによってお客さんが入れなくなったということ、またレジ金が足らないということで、100万円以上の損害賠償を請求されるということがありました。交渉の時に、「損害賠償するのであれば内訳を示してください」と言うと、内訳は示さない。「損害賠償の根拠は具体的に何ですか」と言うと漠然とした回答だけで「こういうことでいくら損害があった」とは言ってくれないということもありました。立場の弱い人にちょっとミスがあったら、ざっとつけ込む。確かにミスがあると「これ払わなければいけないのかな」と思わされる。また、「自爆営業」もあります。学生バイトにもかかわらず、恵方巻きやクリスマスケーキのノルマを課せられて、「売れなければ買い取ってください」と。これは日常茶飯事です。
ブラックバイトが起きる背景には、非正規労働者の増大があります。全労働者の約4割が非正規になっています(出典)。労働市場が底抜けし、かなり低賃金化して低い層の労働者がかなり増え、格差と貧困が広がっています。また、最低賃金層の労働者も今かなり増大しています。都留文科大学の後藤道夫名誉教授が試算を出しているのですが、2001年と2015年の比較で、最低賃金額以下で働いている人は1.8%から4.1%まで増えています。最低賃金の1割増しも4.2%から10.1%に。2割増しは8.1%から17.4%に。3割り増しは12.4%から24.0%となっています。そうすると、学生バイトの時給とあまり変わらなくなります。
変わらないので、学生であるということを配慮されずに安く使われているのです。「そのユニフォームを着たらお店の代表です。お客さんに対してはお店の代表なのだから、高校生や大学生としてではなく、労働者、働くスタッフとして意識を持ってください」と言われます。安くは使われるのですが、求められるのは普通の労働者と同じ。
また、家庭の貧困も原因の1つです。大学生の仕送り額が減っています(出典)。大学生も多くがアルバイトをしていますし、高校生も同じです。高校生に「なぜアルバイトをしているのか」と聞くと、「大学に行くための学費を稼がないといけない」「家に多少お金を入れないといけない」「家にお金ないから自分で遊ぶお金は自分で稼がないといけない」と話します。子どもの貧困は家庭の貧困であり、労働市場の低賃金化によってかなり連関していくのかなと思っています。