18歳以下の女性を狙う卑劣な人身取引の実態 日本にも児童労働の深刻な問題が現実にある
「AVをはじめとするポルノ等への出演強要被害」
これは多くのケースがありますが、特に代表的なケースを簡単に説明します。まず、入り口が2つあります。1つが街頭での直接的なスカウト、もう1つがウェブサイトでの求人広告または虚偽の広告です。1つ目の場合、少し前まではスカウトがしつこく付きまとってその足でAVの事務所まで連れていかれることが多かったのですが、現在は多くの自治体の取り組みが功を奏し、付きまといまではなくなりました。しかし、短い時間の中で連絡先を交換し、後々時間をかけて本人に接触するということが起きています。いずれにしても、入り口としては「AV」という話は一切出ず、例えば、「芸能人に興味ありませんか?」「アイドルになりませんか?」「モデルをやりませんか?」という言葉でまず近づいてきます。次第に、巧みにAVプロダクションに誘導され、ここで非常に巧妙かつ執拗な説得が行われることになります。
例えば、「うちはAVもやっているけれど、それはやりたい人がやればいいだけで、仕事は選ぶことができる。嫌な仕事はやらなくてもいいし、男の人に触られる仕事は一切ない。それはあなたの自由です。だから今日は登録だけしておいてください」と契約書が渡されます。10代前半の社会経験のない相手なので、加害者側から見ると最も簡単に誘導できる仕組みになっています。ここで契約書にサインをしてしまうと、後日「AVの仕事が決まった」と連絡があり、「出るつもりもないし、出ないと言いましたよね?」と伝えると、契約書をちらつかされます。「この契約書で、撮影が本人の都合で中止になった場合はそのキャンセル料を本人が負担することになっている。これから現場を荒らすことになると200万〜300万というキャンセル料がかかることになるが、それを払うことができるのか?」と追い詰められ、泣く泣く撮影に応じざるを得ないという状況になってしまいます。しかし、一旦AVに出演し販売されてしまうと、DHSの時代と違って今は全てネット上での配信が行われるので、性的な映像の完全な抹消は非常に困難になってしまいますし、誰でもパソコンやスマホから閲覧可能な状態になってしまいます。その結果として、学校や会社にバレてしまい、退学になる人もいますし、仕事を失う人もいます。本人には働く意思があっても、就職活動の最中にAV出演がバレると仕事に就くことも困難になり、後々まで本人に不利益が響くこともあります。
これはよく「成人女性だけの問題じゃないの」と言われることもありますが、実際に昨年大阪府警が摘発した件で、「Moe Moe Style」というホームページ(現在閉鎖中)で、主に高校生を相手にリクルートをしていたものがありました。18歳未満の子どもに対して「AV」という言葉は一切使わずに、「コスプレのモデルをしたらアルバイト代を払います」とリクルートしていました。皆さん安心して応募をしてくるわけですが、先ほどの流れのように契約書にサインをさせられて、本人はコスプレの撮影かと思ったら、実際には本番の行為まで要求され、契約書を出されて断れずに応じざるを得なくなるという状況に。警察が摘発した時に約200人の契約書が押収され、そのほとんどが18歳未満だったと言われています。当会へのAV被害についての相談も、2012年、2013年には1件だったのが、2014年には36件、2015年には62件、2016年には100件、2017年も99件と増えてきているのが現状です。
12歳の子どものケース
「売春強要」
今回は、特に若い被害者の事例を紹介します。12歳の子どものケースなのですが、育児放棄されて戸籍上は父親がおらず、母親は公益組織暴力団の構成員ということで、昔から施設で育っているという状況でした。その施設も事情があって出てしまい仕事を探す中で、見つけたのが風俗だったということで逃げ、別の都市で斡旋された仕事も風俗だったので逃げ、そうこうしているうちに反社会的組織の人間から追われることになりました。危険を感じて児童相談所に相談し、そこから当会に繋がったという事例です。これは実際に当会が介入して本人の保護まで至ったのですが、こうした支援に繋がれる子どもはおそらく一部で、実際には水面下にはもっと多くの被害があると考えています。