18歳以下の女性を狙う卑劣な人身取引の実態 日本にも児童労働の深刻な問題が現実にある
ILOが4年ごとに出している国際的な推計によると、2016年時点で世界で就労している子どもは2億6400万人でした。そのうち、私たちが問題視している児童労働は1億5200万人、その中の危険有害な労働が7300万人でした(出典)。児童労働の「児童」が何歳を指すのかということなのですが、「国連子どもの権利条約」では、世界共通の子どもの概念を「18歳未満」ということで定義しています。児童労働の線引きは、15歳未満は義務教育年齢で就労すること自体が基本的には禁じられています(新聞配達等の軽い労働については許可制)。また、16歳以上で働いてもよい年齢だけれども最悪の形態の労働、あるいは危険有害な労働に就いている子どもたちを児童労働と考えています。
世界の傾向を見ると、児童労働数は年々減少していますが、ここ4年間で減るスピードが落ちてきているという現状があります。児童労働が起きる理由についてですが、例えば、私たちが活動しているインド南部のコットン畑は、遺伝子組み換えハイブリッドの種子を栽培している地域で、女の子が主に雇われており、児童労働も増えています。その背景には、ビジネスとしてこの新しい遺伝子組み換えの種を栽培する人が増え、それによって手で一つ一つ人工授粉させなくてはならないという作業が生まれ、集中的に安い労働力を必要となったことです。人為的な労働市場の需要の変化に、たまたまこの地域の供給要因が重なりました。その供給要因は、女の子に対する教育の関心が低く、教育環境が整っていないということです。
「どうせお嫁に行ってしまうのだから」とか、あるいは「ダウリー制度(結婚時に花嫁の家族から花婿および花婿の家族に対してされる支払いのこと)」があり女の子は15歳くらいから「私の持参品どうなるのかしら」と心配します。そういう気持ちにつけ込んで子どもたちを雇うような状況が生まれています。また、この地域が農閑期になると親に収入がなくなるなど、収入が不安定ということも要因の一つです。さらに、児童労働の影響はこの世代だけではなくて、次の世代にも影響します。いろいろな活動地でインタビューすると、「若い頃に働き続けると40代で体に限界がきてしまい、自分の子どもを働かせてしまう」と。貧困の悪循環でどんどんと繋がってしまっているという現状がありました。
いまだ未知数な日本の児童労働者数
認定NPO法人ACEアドボカシーオフィサー 太田まさこさん:私からは、日本における児童労働の状況調査の中間報告をさせていただきます。日本の児童労働の定義は、労働基準法で15歳が就労最低年齢、18歳未満が危険有害な労働が禁止だと定められています(出典)。中学生に関しては軽易な労働は許可があればできるということになっています。13歳以下はその軽易な労働も禁止なのですが、子役やタレントは特別な許可があって活動できるということになっています。その他、将棋の棋士のような個人事業主は、労働者とはみなされず、労働基準法の適用範囲外となっています。