18歳以下の女性を狙う卑劣な人身取引の実態 日本にも児童労働の深刻な問題が現実にある
もう1点、奨学金の問題もあります。何百万もの奨学金の返済を抱えざるを得ず、社会に出た時に借金を抱えるマイナスからのスタートになってしまうのです。そこから何年も学費を返済しなければなりません。そうしたことから、大学の学費を稼ぐためにアルバイトする高校生が急増していると考えています。
やはり、ブラックバイトの問題の根本的解決には日本社会の格差や貧困の是正が必要です。労働問題を中心に低賃金層が増えたり、非正規が増大したりということが背景に格差・貧困が広がって、家庭の貧困にも繋がりますし、高校生がアルバイトに出ざるを得ないという状況になる。しかも、そこで違法な働かせ方が蔓延してしまう。立場が弱いのでそこにつけ込む使用者が出てくるという関係になっていると考えています。
沖縄の児童労働の実態「14歳や15歳から働いていた」
琉球大学教授 上間陽子さん:今沖縄で2つの調査をしています。1つが沖縄県の風俗業界で働く女性、もう1つが若年出産女性の調査です。現段階で、風俗業界の18名の男女、若年出産の女性48名にお話を伺っています。1つ目の調査で分かってきたことは、風俗業界で働いている方々の働き始めた年齢が低いということです。全員が18歳未満の時から働いているということでした。若年出産女性の調査では、「子どもを10代で産んだ若い女性たちに話を聞く」というのが調査設定の入り口だったのですが、始めてみたら10代の子たちの8割は風俗業界で働いているという状況でした。こちらもスタートの年齢が早く、14歳や15歳から働いていたという方が多いのが特徴でした。
なぜこうして働いているのかと聞いてみると、「豊かになってお金を儲けることで、お洋服を買ったりお化粧品を買ったり友達を遊びに行ったり飲みに行ったりしたかった」「居場所が欲しかった」という話をします。「居場所が欲しかった問題」や「何らかのアイデンティティが欲しかった問題」を深掘りしてみると、育ってきた家庭が大変厳しいというケースが多いことも分かりました。子どもの育ちというのは「家族」と「学校」と「地域」という3カ所で営まれるものなのですが、この中で最も力が強くなっており影響力が大きいのが「家族」です。しかし、家族が弱い子どもは学校に繋ぎとめられるのも難しく、地域という場所に繋ぎとめられるのも難しいという状況になります。家族が弱い子どもはいろんなところで脆弱になっているということです。そういう子が早期に学校から離れたり、学校に足が向かなかったりという時に、風俗業界がそこにあってアクセスしてしまう。
でも、中学生で働いてもずっと継続的に働いているわけではありません。その後に家族形成する子もいますし、一旦他のところに行くなどして離れる子も。しかし調査をしていくと、やはりまた困難がある時に風俗業界に戻ってしまうということがありました。それは、まとまったお金が必要な時です。例えば、運転免許に関してもそれを取るためには20数万かかります。車を買わないといけない時も、中古を買ったとしても保険などを含めると20万はかかります。そういうまとまったお金が必要になった時に、「それを稼げるのは以前働いていた業界だ」と戻ってきてしまう。一見自分の選択のように見えるかもしれませんが、選択肢が非常に限られた中で行ってしまう、選んでしまうという状況があります。これを変えていくためには選択肢を豊かに作るとか、まとまったお金が必要になった時の支援を増やすしかありません。
また、調査をやっていて深刻だと思ったのが、風俗業界では若い子が性的に慣れていないということです。よって、性的な被害に遭っている子が多いです。性被害を抱えても、若年で自分の困難を口にするというのは非常に難しいし、自分について語る言葉を十分に持てていない中で働くことで、被害について語れない、被害を被害化できないという状況が起きています。