W杯で奮闘する宇佐美・原口を支えた男の胸中 ドイツクラブのフロントで活躍する瀬田元吾

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多くのフォルトゥナファンが集まった(写真:フォルトゥナ・デュッセルドルフ)

原口元気は、来季はハノーファーで新しい挑戦をする決断を下すことになったが、フォルトゥナにとっては、昇格へ導いてくれたヒーローであることに変わりはない。

宇佐美貴史に関しては、昇格イベントの際にファンに向かって「僕はデュッセルドルフが大好きだ。だから、またね!」とコメントしたように、フォルトゥナへの完全移籍を望んでくれているが、まだ所属元であるアウグスブルクとの話し合いに合意点を見出すには至っていない。

「デュッセルドルフに日本人社会が出来て60余年。今では7000人を超える邦人が暮らし、ヨーロッパで3番目に大きいこの日本社会として知られています。300社を超える日系企業が欧州の拠点とするなど、日本とヨーロッパを繋ぐ非常に重要な街でもあります。そんな街で日本人がドイツ人をハッピーにすることが出来たこの事実は、今後も語り継がれるに違いないでしょう」

瀬田元吾氏が懸け橋となるJリーグや日本との関係

瀬田氏はドイツのプロクラブのフロントで、日本人スタッフとして10年間のキャリアを積み、その間には3部リーグから2部リーグへ、そして1部リーグまでの昇格を共にしただけでなく、逆に1部から2部への降格、そして2部での残留争い、更に再び1部リーグへの復帰も経験した。

日本人としての視点を持つように心掛け、何が日本サッカー界の参考になり、何を日本のクラブに提案することができるのか、様々な形でJリーグクラブへも還元していきたいと常に考えているという。

「フォルトゥナを日本人選手の海外挑戦の最初のクラブにできるよう、これからも積極的にチャンスを提供していきたいと考えています。このクラブでヨーロッパに足を踏み入れ、そして次のステップを踏んでいってほしいなと思いますし、そういった機会の提供は選手だけではなく、指導者やマネジメントの分野まで広げていくことが出来ればと考えています。

私自身は小さな存在ですが、そうやってコツコツと築いていく日独の懸け橋になり、今後多くのサッカー関係者が渡ってくれるようになること、それが私の大きな目標です」

Jリーグが開幕して25年。

日本代表が初めてW杯に出場して20年。

6大会連続出場を果たし、本大会2カ月前の監督交代という危機も乗り越え、決勝トーナメントに3度目の進出を決めた。

7月2日、日本代表はロシアW杯の決勝トーナメント1回戦ベルギーとの決戦(27時キックオフ)で歴史を塗り替える新しい扉を開こうとしている。

そこに向かう道のりは、選手だけでなく、様々な立場から日本サッカーの可能性を信じ発展に取り組んだ人たちの挑戦でもある。

(文中一部敬称略)

池田 鉄平 ライター・編集者

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いけだ てっぺい / Teppei Ikeda

Jリーグ、国内、外資系のスポーツメーカー勤務を経て、ウェブメディアを中心に活動。音楽一家で育ち、アーティストとしてインディーズでアルバムリリースも経験。スポーツ、音楽、エンタメを中心に取材活動を行っている。

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