日本とフランス、夕食の風景はこんなに違う 夕食は「家族の絆」を深める最適な場だ

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くみ:そもそも日本では、普通は1カ月も休みが取れないからね。うちは、高校生のときにほぼ2週間、夏休みの時期に父が休みを取って家族で海外旅行に出かけたんだけど、期間が長いことと、行き先が海外ということで、クラスでそんな人はほかにいなくて、驚かれた記憶がある。

エマニュエル:へぇ、そうなんだ! 僕が子どものときは、バカンスの行き先はいつも決まっていて、8月は毎年南フランスの海の近くで1カ月過ごし、4月の春休みには2週間、また別の南西の地方で過ごしていたよ。だからそれぞれの場所に家族の思い出や行きつけのお店なんかがあって、引っ越しした訳でもないのに、子ども時代は3つの都市で人生を過ごしたって感じだね。

フランスでは中高生もしっかり大人の輪に入る

くみ:毎晩の家族での夕飯、それに長いバカンスを家族水入らずで過ごすことは、確かに家族の絆を強めると思う。フランスでは、家族ぐるみの友人をレストランではなく自宅に招いて、複数の家族で食卓を囲むことも多いけれど、きちんとした夕飯の時間や、段取りを日頃から決めていることも、気軽にほかの家族を呼べる理由の1つかもしれないわね。

それに、中高生くらいの子どもがいる家庭に呼ばれると、彼らもきちんと食卓について、物怖じせずに両親のお客さんの大人とも話をして、自分の意見を言ったりするし、何より驚いたのは、食事が終わると彼らがすっと席を立って、全員の食器を片付けること! 一般的なイメージだけど、日本の中高生は反抗期もあるし、親のお客さんが家に食事に来ても、たとえ同席したとしても席を早めに立ってしまうか、ましてや両親の分も含めた後片付けをするなんて、とても想像ができない。

でも、改めて考えてみると、中高生はまだ両親の庇護下で生活しているわけだし、自分たちができる範囲で手伝いをするのは当然のこと。ご飯は作ってもらって当たり前、自分は手伝わなくて当然、それどころか反抗期まっただなかで両親と口もきかない、という中高生は日本では少なくないと思うけれど、私はフランスの家庭を見ている中で、日本のその状態のほうが逆におかしいと思うようになったわ。

エマニュエル:確かに、週末には友人家族を招いての夕食はよくあるよね。そういうときは、中高生ぐらいになると大人たちの議論に加わることができるけど、幼児や小学生は大人たちの会話の邪魔にならないように、別のテーブルで食べさせたり、早めの時間に食べさせてから子ども同士で遊んでもらったりするんだよ。

その点、日本はこういうときでも小さな子どもと大人がちゃんと混ざって、会話も子どもに合わせつつ和気あいあいとしているのを見かけたけど、それはそれで、すごく素敵だなって僕は思ったよ。

佐々木 くみ 執筆家、イラストレーター

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ささき くみ / Kumi Sasaki

東京生まれの30代。フランス在住10年を超す。2017年10月に、エマニュエル・アルノーと共著で自らの体験をつづった『Tchikan(痴漢)』をフランスで出版。イラストも手掛けた。

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エマニュエル・アルノー 小説家

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Emmanuel Arnaud

1979年生まれ、パリ出身。2006年より児童文学、小説、エッセーをフランスにて出版。2017年にThierry Marchaisseより佐々木くみとの共著『Tchikan』を出版。2000年代に数年にわたり日本での滞在、および勤務経験を持つ。個人のサイトはこちら

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