くみ:うちは日本式に、一度にすべてのお皿が出て来て、その後は誰もほぼ席を立つことなく一斉に食べていたと思うから、エマニュエルの家に比べたら夕食の時間も短かったんじゃないかと思う。
でも、やっぱり、同じ食卓にいなきゃいけないとか、逃れられない、というのは一緒。両親が私の勉強具合や進路について質問してきたり、家族の中で喧嘩しているときなど、一刻も早くご飯を終えて食卓を離れたいときもあったわよ……。
エマニュエル:まぁでも家族仲が悪くないんであれば、この夕食の時間というのは家族の絆を深めるのには不可欠なものだと思ってる。日本ではやっぱり平日はお父さん抜きの夕食が多くなってしまう家庭は結構あると思うんだけど、このことって何か影響があるのかな?
バカンスは夕食の「延長線上」のようなもの
くみ:そうよね……。うちは、日本では例外的だったから、知人の話やテレビなどから想像するしかないけれど、よく日本で「家庭にお父さんの居場所がない」と聞くのは、そのせいも大きいと思ってる。
エマニュエル:フランス人が残業しないっていうのも結局、家族での夕食の時間を大切に考えていることにつながるんだ。家族でのコミュニケーションの時間は仕事以上に人生において重要であるとされているからね。
そう考えると、フランス人にとってのバカンスは、いわば家族での夕食の時間の延長線上に位置するといえるかな。
くみ:というと?
エマニュエル:考えてもみてよ、誰も知り合いがいない所で夏のバカンスを過ごすとしたら、1カ月もの間ずっと24時間家族とだけ過ごすんだよ。これだけずっと一緒にいると、時々けんかや口論になることだってある。でも、それだけ濃いコミュニケーションをとれるってことでもある。
とはいえ、中には友人家族と一緒にバカンスを過ごしている人たちもいるし、フランスでは、海岸とかリゾート地だと日中、子どもを預かってくれるクラブやスポーツ教室みたいな場所があるから、子どもをそこに預けて、その間親はのんびりと休息する、なんてこともあるんだけどね。日本だったら旅行先で子どもを預けるなんて、ありえないんじゃない?