「パラスポーツ」専用施設が誕生した舞台裏 練習場所の確保にこれまで悩まされてきた

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パラサポとは2015年5月に日本財団の支援で設立。2020年東京パラリンピックおよびパラスポーツ環境の発展のため、パラリンピック競技団体の体制整備、パラスポーツの普及啓発事業、インクルーシブ社会(注:共生社会のことで、障がいの有無にかかわらず、積極的に参加・貢献できる社会を指す)の実現へ向けた事業を展開している。その事業の一環として、パラスポーツの競技団体が待ち望んでいた「専用体育館」を造った。

なんといっても「ユニバーサルデザイン」を採用した「バリアフリー施設」の見本のようになっている。

シャワーも使いやすさをよく考えた仕様だった(筆者撮影)

たとえば、トイレ。扉は左開き、右開きの2種類ある。トイレットペーパーも左右からとれるようになっている。便座は背もたれがついていて体を安定させやすい。洗面台の前面の縁が低くなっていて、車いすの低い体勢でも手を差し込みやすい。

たとえばシャワー。「The・シャワ―」と呼ばれるものは、車いすでシャワー室に入り、座ったまま体中に浴びられる優れもの。

たとえば、廊下。車いすユーザーの使い勝手を優先して点字ブロックは敷設していないが、弱視の方のために床を黒、壁を白に色分けして、床にはラインを引いていることで、方向がわかりやすくなっている。

バリアフリーのアイデアは他でも生きる

健常者では気づかない、使い勝手の良さを十二分に取り入れているのが特徴だ。すでに地方自治体や建築関係企業などから、見学の問い合わせが来ているという。

色分けされた廊下(筆者撮影)

こうしたバリアフリーのアイデアや実際の造りを見ることは、障がい者だけではなく、これからの高齢化社会に対応する施設を造るにあたって参考になるだろう。そういう意味で、このアリーナはオリンピック・パラリンピックでよくいわれる「レガシー」そのものの気がする。

建物の大半を占めるアリーナ自体の使い勝手も、パラスポーツならではの苦労から生み出されている。行った日はちょうど「ボッチャ」の合宿が行われていた。体育館に入ると、真新しい木の床に線や点がある。

「(既存の体育館では)線を引くことから始めないと練習ができません。ラインを4面引くとなると、それだけで30分、1時間かかってしまう。ここではラインを引いてあるので、すぐに練習できる。それだけでも大きい」と、日本ボッチャ協会の村上光輝強化指導部長は話した。

ボッチャというのは、重度脳性麻痺者もしくは同程度の四肢重度機能障がい者のために考案され、ジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールに、赤、青のそれぞれ6球ずつのボールを投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、いかに近づけるかを競う競技だ。

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