「引退アスリート」の人材活用も日本の課題だ 現役時代からの「デュアル」キャリアに注目

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2017年2月にスポーツ庁は「スポーツキャリアサポートコンソーシアム」を創設した。右が鈴木大地スポーツ庁長官(写真提供:日本スポーツ振興センター)

競技生活を終えたアスリートのセカンドキャリアは長らくスポーツ界の課題とされてきた。

その打開策として期待されるのが「デュアルキャリア」の推進だ。日本ではまだ認知と理解、仕組みづくりを進めている段階だが、海外のスポーツ先進国ではすでに民間企業による支援や大学との連携、法整備などが進み、アスリートの一生を通じたキャリア形成が実践されている。働き手不足が深刻な日本社会にも、特殊な経験とノウハウを持つアスリートを生かさない手はないだろう。

スポーツ基本計画に盛り込まれたデュアルキャリア

五輪や世界選手権など華々しい舞台で活躍したアスリートは競技引退後、どんな第2の人生を送るのか。五輪のメダルがあればアスリートタレントやチーム監督として、メディアやスポーツの世界で活躍する道もあるだろう。

だが、大半の選手の職探しは厳しい。一部にはJOC(日本オリンピック委員会)の就職支援事業「アスナビ」などを通じて、現役のうちに就職先を見つける選手もいるが、多くは自助努力に委ねられるのが現状だ。その結果、仕事に就けてもアスリートのキャリアをほとんど生かせなかったり、報酬が低く生活に不安を抱えたりするケースは少なくない。中には社会に居場所を見つけられずドロップアウトしてしまう事例もある。

これではスポーツに明るい未来など見出せない。そこで、スポーツを管轄する文部科学省は「スポーツ基本法」(2011年制定)に基づき、2012年3月、「第1期スポーツ基本計画」を策定。その中に「デュアルキャリア」の施策推進を初めて盛り込み、アスリートのキャリア支援をスポーツ界以外の協力も得ながら進める方針を固めた。

ちなみにデュアルとは「二重」を意味する英語で、デュアルキャリアは「競技者」としての人生と引退した後を含む「人」としての人生を並行して歩む、アスリートのキャリア形成の二重性をあらわす概念とされている。

スポーツ基本計画にデュアルキャリアが盛り込まれる以前も、セカンドキャリアに備え、アスリートと企業のパイプづくりやマッチング、仕事に役立つスキルの習得などが行われてきた。

それでも、競技生活の終盤や引退直後など、始めるタイミングが後手に回っており課題になっていた。そこでデュアルキャリア施策では、エリート選手の道を歩み始めた時点からキャリア形成を開始し、引退まで計画的にキャリアプランを進めていくことを目指す。

スポーツ庁委託事業「スポーツキャリアサポート推進戦略」を受け、デュアルキャリア教育プログラムなどを開発作成するJSC(日本スポーツ振興センター)によれば、エリート選手にはタレント発掘の対象選手や競技団体の育成プログラムに乗っている選手が含まれる。また現役時代をデュアルキャリア、引退後をセカンドキャリアと呼び、両方を通じたアスリートの一生を「スポーツキャリア」と呼ぶという。

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