講談社「ボンボンTV」、華麗な復活劇の舞台裏 漫画編集者はユーチューバーを志した

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「中心にいるクリエイターたちが頑張ることが大事だと認識している。このプロセスは漫画編集者と漫画家の距離感と、とても似ている。だからこそタイアップ動画でも、身をもって感じた『クリエイターに任せる』ことを大事にしている」。

先述のグミを固めるという企画を、安永氏は例に挙げる。あれをおじさんが面白がってやれるかというと、そうではない。グミを固めるだけでも4~5時間かかり、おじさんだと途中でばかばかしくなるからだ。

「社員が就業中にそんなことしていたら、何やってるんだという気持ちに苛まれるはずだ」と、安永氏は続ける。「しかも、それが面白いという確信もまったくない。でも、まだ20代前半の若者たちなら、これが子どもたちには面白いんだという感性が残っている。そこはクライアントにもわかってもらえたらと思う」。

「そのときの最適解」

コロコロとおはスタの関係を参考に、デジタル動画と出版という新しいエコサイクルを目指したボンボンTV。事業としての黒字化も果たし、関連イベントやグッズも人気だ。いまや「キッズボンボンTV」という兄弟チャンネル(登録者数16万人[2018年5月現在])も誕生し、未就学児までリーチを広げている。この状況を見れば、十分に成功していると表現してもいいだろう。だが、安永氏は簡単に肯定しない。

「我々もわからず手探りでやっていることもあり、成功している実感はあまりない。何を持ってしたら成功なのか……。難しいのはマーケットのスピードが速すぎて、今年の最適解が来年の最適解ではない、ということだ」。

成功の定義は毎月変わり、クリエイターの人気もダイレクトに数字で視聴者に見えてしまう。だから環境を整え、クリエイターととことん向き合っていく。これは出版社として編集者がやってきたことにほかならない。安永氏は最後に、好きな小説家のひとりであるという志賀直哉の短編小説『宿かりの死』を引き合いに出した。

「『宿かりの死』では、主人公の自信満々なやどかりが、次々と大きな貝を求めてく。貝の大きさに合わせて、自身のカラダも大きくなっていくのだが、最後には大きな法螺貝に最適化されるという話だ。それと同じように、成長を止めないことが大事。クリエイターへの尊重を変えずに、そのときそのときの最適解を求めていく」。

(Written by 矢野貴久子、長田真、Image courtesy of ボンボンTV)

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