講談社「ボンボンTV」、華麗な復活劇の舞台裏 漫画編集者はユーチューバーを志した
そこで、安永氏はつてを頼り、UUUMを訪ねる。代表取締役の鎌田和樹氏に、協業を直談判しにでかけたのだ。
「驚いたのは、話しはじめてものの数分で、鎌田さんが『一緒にやりましょう』といってくれたこと。そのときに具体的な企画の話も何もしていなかった。その後、2カ月ほどで『ボンボンTV』が立ち上がり、これがネットのスピード感か、と驚いた。コミックの世界では意中の漫画家を口説くのに数年かかることもある」。
「ボンボン」というブランドを、コミックではなく動画で復活させることに、自身もそして社内も抵抗はなかった。講談社の役員は、むしろ後押ししてくれたという。
「役員は高い目線から見ているから、変わらなければという危機感がむしろ強い。だから、『チャレンジしろ』といってくれた。(出版社としての)課題は山積されているが、それはチャンスだ、という考え方だ。自分自身、ボンボンは漫画でなければならないとは思っていない。『マガジン』が講談社のひとつのブランドであるように、『ボンボン』は小学生向けのコンテンツを提供するためのブランドだ。そういう意味では、むしろわかりやすいと思った」。
「おっさんはダメだ」
ボンボンTVの開局は、2015年7月31日。社内外の後押しを得て、ローンチしたのは良かったが、当初は暗中模索の状態だった。現在は削除になっているが、ローンチ当初1年目までは、安永氏自身もユーチューバーとして、ボンボンTVに動画を投稿していたという。そのころは、動画1本の視聴回数は数百、ハネても数千というレベルだった。
「当時はマックスむらいさんとHIKAKINさんの時代。むらいさんの年齢(2015年当時は33歳)で子どもたちが支持してくれるなら、おっさんの自分にも可能性があるかなと思った。それで、ユーチューバーをやってみたというのが正直なところだ」と、安永氏は当時を振り返る。「そのときは、自分でUFOキャッチャーやミニカーで遊んでいる動画を作った。だが、結局、おっさんはダメだということがわかった」。
「身をもって証明したが、おじさんの感性が入れば入るほど、(視聴回数は)落ちる」。
しかし、この自分でもやってみた経験は大きかった。当時、子ども向けのこういった動画はなかったからだ。そうした努力が実を結び、2016年3月7日に公開した動画「【実験】ペットボトル丸ごとグミにしてみた!」が、初の100万再生を記録する。