「ストリッパー物語」ラジオ劇が示した可能性

広末涼子や広瀬すずも出演、新たな表現探る

明美のヒモ男、シゲ役にはつか作品にもたびたび出演し、ハイテンション演技は自家薬籠中の筧利夫。そして、シゲの娘・美智子役には広瀬すずが起用されている。ほかにも津川雅彦、笑福亭鶴光、神田松之丞(語り)といった名前が並ぶ。

異例なのはキャストの陣容だけではない。ラジオ番組の収録は1日で終えるのが通常だが、この作品の制作においては、本読みに3日、収録に5日という多大な労力が費やされている。

まるで舞台稽古のような日数を要しているが、そもそもラジオの記念番組がなぜトーク番組でも、音楽番組でもない、ラジオドラマだったのか? それには演出家・杉田成道の周到な計画があったようだ。

「最初から、今のラジオにはないものを作ってみようという意図がありました。つか作品を選んだのも、ラジオ向きの題材ではなかったからです」と、杉田社長。そもそも映像がないラジオドラマの場合、セリフを最小限に凝縮して、聞き取りやすく、聴取者にわかりやすく伝わるように演出するのが基本スタイルだ。つか作品は膨大な量のセリフが速射砲のように飛び交うのが特徴で、そういう意味では「ラジオ向き」とは言いがたい。しかし、そこを逆手に取った。

「世の中のエンターテインメント作品にありがちなサービス精神はみじんもなく、客の心をわしづかみにして触発していく激しさがつか作品の本領。これをラジオドラマとして成立させることができれば、今までにない、インパクトのある作品になるのではないかと考えました」(杉田社長)

ラジオ向きとはいえない作品をあえて選んだ

収録では、これまた舞台で上演するのときと同じくらいのエネルギーを注いでいる。劇中、広末涼子扮する明美と、広瀬すず扮する美智子がタップダンスを踊るシーンでは、演技をしている2人の隣でプロのタップダンサー(監修・HIDEBOH)がタップを刻んだ。さらに、広末と筧によるラスト15分のクライマックスシーンは、台本を持たず、セリフを覚えて舞台さながらの迫真の“演技”を披露した。スタッフは手持ちのガンマイクで2人の声を収録したという。

「出演者のみなさんには、劇場の舞台で上演される芝居と同じ手順を踏んで、本読みと稽古をし、観客を前にした本番さながらの演技をスタジオで収録しました。できあがった作品をあらためて聞くと、そのときの臨場感がとてもリアルに伝わってくるのがおもしろかったですね」(杉田社長)

そして今回の作品を通してラジオという“舞台”が、新たな表現手法として成立するのではないかと、手応えを感じている。

「舞台作品には、映像つきの『舞台中継』という記録法がありますが、観客として舞台を観たときほどの感動は驚くほど伝わらないんです。それと比べて、ラジオドラマはかなりの再現度でその場の空気を表現している。音声しかないから、舞台作品と同じようにお客さんの想像力に委ねられている部分が大きいのでしょう。俳優のちょっとした声の調子の変化が、登場人物の心や表情の変化をリアルに表現してくれます」(杉田社長)

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