トリビアを探せ!
――総支配人がおススメの、このホテルの楽しみ方はありますか?
小さなホテルに見えますが、歴史が満載です。細かい装飾の一つひとつに物語や意義が全部あります。デザイン的に優れているというだけでなく、それぞれに必ず意味があるのです。
たとえば、スペイン産の大理石のフロア。格子状に帯が入って、真ん中の交差しているところに真鍮のプレートが埋め込まれています。そこにある花は「クレマチス」といって、(東京駅丸の内口の)南北のドームのレリーフにもなっています。花言葉は「旅人の喜び」。東京駅にふさわしいものです。
3つの宴会場の名前にもちゃんと意味があります。いちばん広いのが「鳳凰」。これは南北のドームを見下ろすように伝説の鳥・鳳凰が見守ってくれていることに由来します。いちばん小さい宴会場は地下1階の「桐」で、伝説の鳳凰は桐の葉にしか止まらず、そこで目覚めると言われているからです。
もうひとつ「陽光」という宴会場があって、そこには縦長の窓があって、非常にきれいに日が差し込みます。1914年に東京駅が開業したときに、時の宰相・大隈重信が「この駅は日本の中心として、太陽が放射線状に光を解き放つように、すべてのものの中心となって輝き続けてほしい」と祝辞を述べられた。太陽の「陽」に「光」と書いて「陽光」です。
――歴史については、本が1冊できますね。
できます。それを見て感じていただきたい。内装をデザインしたリッチモンド社はベルサイユ宮殿のトリアノンパレスなど、歴史的建造物の修復に関して一流の、すばらしい仕事をしています。
ホテル内には昔の写真が100点ぐらい飾ってあり、博物館や美術館のようになっています。古い建物ゆえの天井高があるので、シャンデリアをぜいたくに配置しています。お風呂の人気ランキングでも、首都圏では8位、都市型のフルサービスのホテルではトップです。
――丸の内を散策エリアに含めるとすると、おススメは……。
日本橋もそうですけれども、辰野金吾先生が設計された建物でしょうか。日本銀行本館もすぐ歩いて行けます。辰野氏は東大工学部の第1期生ですが、洋風建築の師匠だったのが英国人のジョサイア・コンドル教授で、ニコライ堂や三菱一号館を作った方です。建築以外にも、東京の歴史を支えているものに触れる楽しみ方があるでしょう。
――東洋経済にゆかりのある石橋湛山も組閣するときに、ホテルの部屋を使ったんですよね。
ああ、そうですね。以前は客室がそう多くあったわけではなく、政府関係者など要人の利用がほとんどでしたから。
(撮影:風間仁一郎、今井康一)
筆者が手掛けた東洋経済オンラインのホテル連載が、電子書籍「1泊10万円でも泊まりたい ラグジュアリーホテル 至高の非日常」(小社刊)になりました。10万円以上するような部屋に泊まりたいと思わせるラグジュアリーホテルの魅力とはいったい何なのか。厳選9ホテルの総支配人たちが大いに語っています。
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