「自動排泄処理装置」が目指す介護の負担軽減 介護ロボット普及のカギはコストと安全性

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ロボットの中には、マッスル製の小型サーボモーター6台を搭載。片腕が棒をつかむと隣のモーターに指令を出し、指令を受けたモーターが動き出します。

モーターが脳と筋肉の役割を果たしているのです。会場では、壁を登るロボットとして大好評。日本の中小企業の夢を背負って登っているのだと、仲間たち全員、感慨もひとしおだったそうです。

36歳の時に独立して起業

玉井社長のルーツは、小さい時から好きだった“もの作り”です。山で木を切っていろいろなものを作ったり、近所の図書館で読んだ航空工学の本を基に模型飛行機を作ったりしていました。好きなことに没頭した少年時代でした。就職したのは、ロボット部品の会社です。1988年、36歳の時に独立して現在のマッスルを立ち上げました。「やはり、好きなことをしたかったんですね」(玉井社長)。

玉井社長(筆者撮影)

しかし、すぐにはうまくいきません。独立して半年で銀行通帳が空っぽになりました。でも、あきらめませんでした。「好きなことだから我慢できるし、頑張れました」と当時を振り返ります。

そんな時、アメリカに人工呼吸器の神様と言われる人がいて、日本の企業と組みたいとオファーがありました。友人と2人、すぐに渡米しました。

しかし、玉井社長はそんなに英語が得意ではありません。友達頼りでしたが、その友達も実は英語は不得手でした。お互い相手が話せると思っていたので、愕然としたと言います。それでも、一生懸命気持ちを伝えようと、“Good”と“Cheap”の2つの言葉を連発しました。

「今考えると、“Cheap”は“安っぽい”の意味で、そんな言葉で交渉する人はいませんよね(笑)」。それでも必死に図解をし、プログラミング言語を使って説明しました。想いが言葉を超え、交渉が成立しました。その商品はロングセラーとなり、今やアメリカだけでなくヨーロッパ、アジアでも使われています。

一方で1999年、小さな本体にコントローラー、ドライバーを組み込んだ一体型小型モーターを開発しました。他に例を見ない自信作です。しかし独自の性能を説明しても、日本の大企業は、企業の規模、過去の実績などを重視することもあり、なかなか採用に踏み切ってくれません。同じものをアメリカの展示会に出品したところ、世界初の製品だ、とすぐに引き合いがありました。

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