「自動排泄処理装置」が目指す介護の負担軽減 介護ロボット普及のカギはコストと安全性

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安倍首相が視察(写真:マッスル)

そんな時(2013年6月28日)、安倍首相が「夢ROBO」や介護ロボットの視察にマッスル本社を訪れることになりました。

ひととおり視察が終わって懇談の時間になり、玉井社長から公的な安全基準取得支援をお願いしました。すると安倍首相は、「国の成長戦略」の一環として快く協力を明言。国際認証の取得をサポートすること、そしてそのための専門家の派遣も約束してくれました。

そのかいあって、2016年12月に生活支援ロボットの安全性に関する国際規格「ISO13482認証」を取得。こうして開発に5年をかけ、価格を抑えつつ安全性も認められた「ロボヘルパーSASUKE」が完成したのです(オープン価格。参考価格は92万5000円)。

現在では数百台のSASUKEが介護施設の現場で活躍し、介護スタッフの負担軽減に活躍しています。なお上海万博の縁で、デザインは喜多氏が担当。SASUKEのロゴの下にT.Kitaのサインがひっそりと添えられています。

国内のサービスロボット市場は拡大が続き、2025年に産業ロボット市場に並び、2035年にはその2倍になると予測されています(経済産業省「ロボット産業市場動向調査結果」)。そのニーズに応えるべく、玉井社長は現在も、介護負担を軽減し、要介護者に優しいロボット開発に取り組んでいます。

「自動排泄処理装置」とは?

そのひとつが、寝たきり老人の排泄の手助けをする「自動排泄処理装置」です。身体に装置した特殊センサーにより大便・小便を判別し、吸引、洗浄、除菌を自動で行います。

自動排泄処理装置を開発中だ(写真:マッスル)

最近のベストセラーに、夫の三浦朱門氏を看取った作家・曽野綾子氏の著書『夫の後始末』(講談社)があります。老々介護の現実を語って評判になっていますが、その中で語られた「奉仕とは排泄物の世話をすること」という言葉には切実な響きがありました。排泄物処理は、介護する者、介護される者、双方にキレイごとではない現実を突き付けます。

「紙おむつは替えるたびに大事なところをさらけ出し、介護される側には精神的苦痛があります。装着したままで自動的に排泄物を処理できれば、そのダメージが大幅に軽減されます。介護者にとっても、排泄を自動的に処理してくれ、そのうえ日常の手入れも簡単なので、大幅な負担軽減になります」と玉井社長。「ロボヘルパーLOVE」(仮称)と銘打ち、現在、開発の最終段階に差し掛かっています。

こうして次々と未開拓の市場に挑戦する玉井社長。その開発への情熱について、最後に語ってくれました。

「弊社の作った人工呼吸器が世界中で何万台と利用されています。ロボヘルパーでも、今まで介護の現場で苦労に苦労を重ねていた人が本当に喜んでくれています。自分の技術が人の役に立ち、社会貢献になっている、という実感は、エンジニアにとってかけがえのないものなのです」

機械いじりの好きだった少年が、会社を創業して以来ずっとやり続けた結果、それが社会貢献につながりました。好きなことを仕事に選べば、つらくても続けることができます。そこに、今話題の働き方改革についての現実的なヒントも潜んでいるのでは、と思いました。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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