国内損保・大手8社トップインタビュー--新商品の開発は進むか

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共栄火災海上 荒川勝利社長
系統チャネル販売を早期に5割まで引き上げたい

 少子高齢化など環境のよくない中で、私たちのきていく道というのは、生い立ちに深く関係すると思うんです。保険業界全体のパイが大きくなることはなくても、農漁協、生協、信用金庫など、協同組合、協同組織との関係の中で、新しい保険のニーズやリスクに対応する商品の開発がなくなることはありません。たとえば最近では、農業従事者が今抱えているリスクは何かを考え、2008年2月に担い手農家専用の賠償責任保険を売り出しました。

株主でもある全共連、農林中央金庫、信金中央金庫などの全国組織と、60年以上にわたって一緒に商品、サービス内容を積み上げてきました。とはいうもの、信用金庫、信用組合、生協の系統チャネルの売上比率は、まだ36%ほど。これを早期に50%まで引き上げたいですね。

信金向けには、傷害保険をベースとしたできるだけわかりやすい商品の投入を進めています。農協は99%が共栄火災の代理店で、他社の代理店は1店もありません。信金は主要な損保との取引があるとはいえ、3割以上が共栄火災の代理店です。銀行窓販解禁などによって、「組織を活用する」というアドバンテージを、やっと利用できるようになりました。お客様、企業、取引先と長く付き合ってきた歴史のアドバンテージを大事にたいと考えています。

インターネット上で加入手続きを完結できるウェブ通販型の団体・集団向け自動車保険の仕組みを、6月から導入しています。これはもともと生協組合員など、お客様は数多くいるにもかかわらず、限られた数の代理店では十分に対応し切れない、という生協側からの声によって生まれたものです。他社のように不特定多数の人へ向けて作ったネット商品ではなく、生協さんのニーズから発想して開発した商品なんですね。

食にかかるリスクなど、リスクマネジメントに関係する商品は、今後、競合各社も出してくると思います。ただ当では、JAとして「食の問題をどう考えるか」という組織全体としてのリスクマネジメントを考えます。

鳥インフルエンザで畜産業者、養鶏業者が困るとなれば、全農からまとめて「こういう保険を作れないか」というニーズを受け取ります。グループの中の共栄ですから、組織全体のリスクマネジメントを、組織の中に入り込んで考えることができます。

こうしたアドバンテージを守っていくためにも、今年秋から議論に入る次の中期経営計画は全共連、協同組織とともに作りますよ。連携を深め、グループ戦略を考えて、強い組織にしたいと思います。

全労災と日生協と一緒に何がやれるか、全共連とどう補完し合い、一体的にやっていくにはどうしたらいいか。グループにとって重要なのはそこです。

(生保・損保特集編集部 撮影:尾形文繁、今井康一、吉野純治)

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