国内損保・大手8社トップインタビュー--新商品の開発は進むか
富士火災海上 ビジャン・コスロシャヒ社長
十分な研究は必要だが、他業種、他業界との提携も検討課題ですね
前2008年3月期の業績はすばらしいとは言えませんが、業界の状況を踏まえればそこそこだったのではないでしょうか。保険料返戻部分を除いて考えると火災、新種、海上の3種目は3年連続で増収しており、また増収率は3位以内です。問題は自動車の減収で、ほかの種目が増収しても帳消しになってしまう。そこでセグメンテーションという考え方が重要になります。
たとえば、注目しているのが、女性マーケットです。自動車保険の『ベリエスト』という商品を、女性向けに改善した『ベリエスト・ミューズ』として提供を始めました。また女性のお客様向けに、事故の受け付けからお支払い、女性特有の病気に関する相談まで、すべて性スタッフが対応するサービスを提供しています。セグメント、切り口で他社と違う商品やサービス、際立った価値を提供していきたいと考えています。
IT技術を駆使することで、事務処理面での効率化を図り、コスト抑制をしていきます。愛媛県松山市の「事務処理集中センター」は、200の支店の事務処理を集中して行う大きなプロジェクトですが、業務がスムーズになり、コスト抑制につながっています。また、08年に稼働させた新代理店システムは、事務処理だけでなく顧客管理に有用なシステムとして、クロスセルもしやすくなり、お客様にも代店にも非常に有益です。
IT投資において考えているのが、「正しいプロセスに投資する」ということです。機械化する前に、まずそのプロセスが正しいかどうかをしっかり分析し、必要であれば改善を加えた後に機械化します。そうすることでコストに十分に見合った最大限の成果を得られます。
私見ではありますが、今後の業界のM&Aは単なる合併ではなく、お客様サービス、資本、コスト抑制で、力を合わせれば業界内で優位に立てるシナジーを生むことができるかが、大きな誘引ではないでしょうか。他業種、他業界との提携、M&Aが大きなシナーを生む可能性もありますね。そういった分野においてはまだ研究が十分なされていないのではと考えています。ただ、十分な検討が必要になってくるかとは思いますが。
当社は子会社に富士生命がありますが、販売網の共有は競争優位性を高めることになります。富士火災のお客様に富士生命の商品を売っていくというクロスセルに力を入れてきた結果、富士生命の成績も非常によく伸びています。生保、損保の組み合わせは、よいシナジーを生み出す例になりえると考えています。