共働き妻が会社を辞めざるを得ない深刻事情 日本型雇用システムが子育てとの両立を阻む
安倍政権が掲げる「女性活躍」推進は、夫婦にとっては共働きが続けやすい社会といえる。同政権下で2016年4月、女性活躍推進法が全面施行。公共団体や民間企業に、女性活躍に向けた目標と行動計画の策定が義務づけられた。女性採用や育成に取り組む企業の裾野は確かに広がっている。
ただし、夫婦ともに企業勤めである場合、冒頭のような育児のほか、介護のような負担が加わると、生活のバランスが一気に崩れてしまう現実もある。しわ寄せが来やすいのは、主に育児と家事を負担している女性だ。
女性がつまずくポイントはいくつかある。保活はいまだに激戦。無事入園できても、子どもの体温が「37.5℃」を超えると、仕事中に容赦なく呼び出しがかかる。いわゆる「37.5℃の壁」だ。
子どもの小学校では平日行事にかり出され、学童保育に「行きたくない」という子どもに悩まされる人も。夏休みなど長期休暇に入った子どもの過ごし方にも気を配らねばならない。
『週刊東洋経済』は6月4日発売号で「共働きサバイバル」を特集。1億総活躍が叫ばれる中、共働きがつまずく実態やその背景について詳報している。
第1子出産前後に約5割の女性が退職
総務省の調査では、専業主婦世帯数は減少傾向である一方、共働き世帯数は上昇傾向が続いている。ただし女性の出産後の就業形態を見ると、パート・派遣の割合が増えているものの、正社員の割合はほぼ横ばい止まり。直近で上昇基調とはいえ、第1子出産前後の就業状況では、約5割の女性が退職している。
もちろん仕事のスタイルは多様。パート・派遣に加え、最近ではフリーランスといった働き方も増えている。ただ企業で継続的に働きにくい環境が残れば、家計はぐらつきやすい。
なぜ、夫婦の共働きがつまずくのか。妻の労働意欲や夫の家事・育児参加の不足、職場の上司の無理解、保育園不足――。メディアでは頻繁に個別の事情が“犯人”扱いされ、やり玉に上げられる。ただし、そうした個々の状況の背後に、より大きな社会構造の課題が横たわる。それは日本企業特有の雇用システムである。
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