ソフトバンク・笠井和彦氏の死を悼む SBIホールディングスの北尾社長もコメントを寄せてくれた

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笠井氏はディーリング、トレーディングのプロとして金融界に名が通っていた。独特の相場観が的中し、笠井氏が率いる為替ディーリング部隊は同行に巨額の収 益をもたらし、その成果への当然の報酬として副頭取になった。香川大学卒でありながら、東大閥の富士銀行で副頭取に上り詰めたのは異例だった。

2000年7月の週刊東洋経済の連載記事に、記者が行った最初のインタビュー記事が載っている。以下、少し長くなるが引用してみる。

なぜソフトバンクに来たのか。安田信託には相談役として残るよう言われたが、僕は若いころから「相談役とはいかがなものか」と思っていた。その前にも富士銀行の山本惠朗頭取が、みずほに戻るよういろいろ心配してくれた。でも、僕が戻ると若い人が一人犠牲になるという。これは僕の考えに合わないのでせっかくのご配慮をお断りした。
外銀や外証からもスカウトがあったが、六年ほど前から面識のある孫さんや北尾さんが熱心に誘ってくれたのでソフトバンクに決めた。入って驚いたのは30歳前後の若い優秀な社員が多いこと。取締役会、株主総会も銀行とは全く違う雰囲気を持っており、独特の活気を感じている。
孫さんからは、「ソフトバンクの戦略全般に首を突っ込んでいろいろ意見してもらいたい」「若い人が多いのでいろいろ教育してほしい」という二点を言われている。また、8月に日債銀が新銀行として引き継がれた後は、新銀行の社外取締役に孫さんと僕が就任する。新銀行が早く再建し再上場できるよう、これまでの キャリアを生かしたい。
ソフトバンクは銀行の取引先として見ると評価の難しい会社だ。ソフトバンクには事業と投資があるが、事業経営のうち過半の株式を持っている部分は分かりやすい。が、JVは分かりにくい。投資はもっと分からない。投資先がある程度育たないと評価できないため、リスクは常に高いと考えざるをえない。
そのため、ソフトバンクの評価には毀誉褒貶がある。これは僕の専門である為替や債券のトレーディングと似ている。課長時代には富士銀行内での評価にも毀誉褒貶があったし、常務時代に他行が損している中で勝ち続けたときに「笠井は何か悪いことをやっているのではないか」と雑誌に書かれたことさえある。
ソフトバンクの行っている投資もトレーディングと同様、儲かるときと損するときがある。全戦全勝はない。しかしトータルでは勝ち続けることがトレーダーのスキル。孫さんは情報をより分ける動物的な勘を持っており、撤退の決断も早い。トレーダーとしての資質十分だと思う。

 

当時のソフトバンクの課題を、見事に言い当てていた。次ページに、ソフトバンクの孫社長、SBIホールディングス・北尾吉孝社長のコメントを掲載する。謹んでご冥福をお祈りしたい。

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