アップルが「Siri」に込めるサプライズの正体 6月4日の開発者会議で何を発表するのか?

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アップルはアマゾンやグーグルに遅れて、ホームスピーカーHomePodを2018年2月に発売した。

しかし発表したのは2017年6月のWWDCだった。アップルはスマートスピーカーとしてではなくオーディオ製品としてHomePodを紹介しており、Strategy Analyticsによると、2018年第1四半期に60万台を販売し、約7%のシェアを獲得しているとみられている。

アマゾンは引き続き、AIアシスタントAmazon Alexaに対応する製品やサービスを増やしており、最近ではスマートホーム製品から自動車へそのパートナーの範囲を拡げている。一方のGoogleアシスタントは、東洋経済オンラインでもご紹介した通り、より先進的な技術開発をつぎ込み、レストラン予約を電話でこなしたり、子どもにていねいな言葉遣いを促すなど、独自の発展を極めている。

前述のスマートスピーカーの販売台数では、Google Homeシリーズが240万台と躍進し、米国内に限ればAmazon Echoを上回るデータも出てきた。5月8日から開催されたGoogle I/Oでは、Google Home miniのデザインに触れるセッションを用意し、「人々のプライベート空間に入り込む存在」として、製品とアシスタントの双方のキャラクターを注意深く設計していることを明かした。

SiriがiPhoneの目立つところに常駐?

その一方で、アップルのSiriは、AIアシスタントとしての評判は高くない。2011年のiPhone 4Sから導入され最も古株で、既にiPhoneだけでなくiPadやApple Watch、Apple TV、Mac、そしてHomePodにも搭載されている。最も広く普及している一方で、アシスタントとしての能力は、アマゾンやグーグル、マイクロソフトに遅れを取っているのだ。少しでも巻き返すためには、Siriでのサプライズが必要だ。

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アップルのソフトウェアの進化の方策は、アプリ開発者の発想や想像力を生かすこと。すでにSiri Kitといわれる開発者向けのAPIは用意されているが、地図や写真、個人間送金、フィットネスなど、活用範囲はまだ限られている。より多くのアプリを声で操作できる仕組みを整えることが急務であり、そうして初めてSiriの発展が始まることになる。

その姿勢を表すためにも、iPhoneのロック画面やホーム画面で、常にSiriの存在を意識させるようなインターフェイス上の仕掛けを打ってくるものとみられる

例えば、Apple WatchのSiri Faceは、Siriがその人の時計の利用パターンやこれから先のスケジュールを見越して、情報カードを用意してくれる仕組み。このSiri FaceがiPhoneにも搭載され、各アプリからの提供情報をSiriが自動的に選別し並び替える機能を搭載するだけでも、Siriの有用性を発見する糸口になるだろう。

はたして、どのような発表内容になるのか。筆者も取材のためWWDC 2018に参加し、サンノゼから速報と詳報をお届けする予定だ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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