「無我夢中であんなに追ったのは騎手のデビュー戦以来」と笑った。1着でゴールすると大きな声で叫んだが、派手なガッツポーズはなし。ウイニングランで大歓声を受けると泣いた。出迎えた藤本助手も泣いていた。友道師も号泣していた。
「20年以上の付き合いで彼のダービーに対する思いを知っていた。何とかウチの馬でダービージョッキーにしたいとずっと思っていた」と喜んだ。「スタッフの思いに応えることができた。最高だった。ジョッキーをやってて本当によかった」と福永騎手。レース後、仲間の騎手や調教師、関係者の祝福でもみくちゃにされた。
記者会見で「ワグネリアンの父ディープインパクトも、母の父キングカメハメハも、友道先生も、オーナーの金子さんもみんなダービーを勝っていて、勝ってないのは自分だけだった。みんなが勝たせてくれたダービーだった」と笑った。
「コンビを組んできた馬でのダービー制覇は格別。勝っても負けても悔いのない競馬をしようと思った。小柄な馬が外からねじ伏せた。体幹が強くなければあんな競馬はできない」と手の内に入れたワグネリアンの力をたたえた。「平成最後だということは意識していたし、すごく名誉なこと。次の元号でもダービージョッキーになれるように頑張りたい」と意欲を述べた。ダービーを勝ったことでさらに脱皮できるのではないだろうか。今後の福永騎手が楽しみである。
福永洋一の息子として誇れる仕事ができた
最後に筆者は質問した。「コテコテの質問ですが、お父さんにこの喜びをどう伝えますか」と。父福永洋一さんの騎乗も知るオールドファンなら絶対に聞きたかった一言だ。福永騎手は「そうですね、顔を見てから決めます」と一度ははぐらかした。しかし、こう続けた。
「自分はおやじの名前でこの世界に入ってきた。福永洋一の息子として誇れる仕事ができた」と締めくくった。
その一言が聞けただけで十分だった。
父の思いを背負ってダービージョッキーになることを宿命付けられ、重圧を背負って騎手生活を続けた23年。平成最後のダービージョッキーにふさわしい。
おめでとう福永祐一。素晴らしい競馬をありがとう。
(文中敬称略)
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