真の謝罪はその表情に、手に、足先に身体全体に「申し訳ない」「とんでもないことをしてしまった」という気持ちがみなぎっていなければならない。言葉では散々、責任を感じているといいながら、身体はまったく違うことを言っている。まずファッションが、紫色の水玉ドット柄のネクタイであり謝罪のときの服装ではない。
質疑応答では、時間が経つほどに緊張感を失っていくのが手に取るようにわかった。椅子にもたれかかる。落ち着きなく体を動かす。髪の毛を押さえてみせる。挙げ句に、時々笑顔までこぼれるようになり、最後のほうでは破顔して笑うようなシーンまであった。見る者は「何にも悪いと感じていない」と直感する。過去の記事でも紹介しているが、こうした「言行不一致」な謝罪が最も人を不愉快にするのである。
ほかにも、危機管理の会見の絶対タブーを無数に冒していた。例えば、質問した記者に「あなた、話、聞いていなかったんですか?」と問いなおすなど、NG行為の最たるものだ。
また、こうした不祥事の会見では、記者に対して「本日はお忙しい中、お越しいただきましてありがとうございます」とは言うべきではない。晴れがましい会見ではないのだから、皆さんにわざわざ足を運ばせることになって「申し訳ない」と伝えなければならない。そんな細かい言い回しも、現場の雰囲気を左右する。
「ありがとう」と言ったワケ
しかし、ここで「ありがとう」と言ってのけた裏には、大塚学長として、この会見そのものが、日大の意向を学生やOBに伝えるための「学内向け」のプロパガンダのために設けたものに過ぎないからだろう。
「本学は12万人の規模で、私一人で全部回ることはできない。だからそんなことも併せて学長としてお伝えしたいこともあり(会見を開いた)」と説明している。これはどういうことだろうか。つまりは、学生やOB向けに、大学としてのメッセージをどう伝えるのかを考えた時、「メディアに来てもらって、拡散してもらえばいいじゃん」といった軽い気持ちで行ったとしか考えられないのである。
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