「宮古島トライアスロン」知られざる経済効果 毎年4月に開催、34回目を迎えた鉄人レース

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出場回数7回という東京都在住の52歳の男性は以下のように語った。

「中高生の吹奏楽部が本当に感動するんです。それがトッププロからいちばん最後の選手まで必ず(演奏を)やっている。途中で誰も手を抜かない。そこにいる吹奏楽者は甲子園並みの選抜されたメンバーなんですよ。ここで演奏したくても選ばれなかった生徒さんたちもいる。指揮者も指揮棒を振りながら、こっちを見ていたり……(笑)。それが可愛らしくて。これがいちばんの栄養ドリンクですね」

中学生たちの懸命な演奏に心を打たれる出場者も多い(筆者撮影)

今年もこの演奏をバックに見事完走を果たした。

「苦しい、もうダメだと思った地点に、おじいと子ども。子どもの『ワイドー、ワイドー』と言う応援で上を向きました」と語る出場回数2回の40代男性もいる。「ワイドー」というのは宮古島言葉で「がんばれー」という意味だ。

島をあげての応援が、参加者を魅了し、増やしているのだ。

家族でゴールできる珍しい大会

ゴールの瞬間は感動の瞬間だ。宮古島大会は全日本トライアスロン大会にして、家族や仲間と一緒にゴールすることができる珍しいレースだ。プロの選手を除いては、アイアンマンに順位は関係ない。あるのは完走できるか、できないかだ。13時間30分以内に完走できれば、みんな勝ち。

家族と一緒にゴールした参加者の男性(筆者撮影)

1分、1秒を競い合う選手権とは異なり、暖かいゴールシーンを見ることができる。

だから選手以外に家族や仲間と一緒に来島する人が多い。

たとえ家族や仲間と一緒に来島できなくても大丈夫。島の子どもたちが一緒にゴールのテープを切ってくれる。

宮古島に移住した30代の男性は、「ゴールした後、みんながゴールして来るのを見るのがいちばん楽しい時間。性別も年齢も関係なく、初めて出場する人も何度も出ている人も価値観が異なる人も、みんな一緒にゴールして来るのがたまらない」と目を輝かせた。

宮古島のトライアスロンは、島民全員の努力で参加者を増やしている。その結果、大きな経済効果をつくっているのだ。13時間を超えるレースを戦った鉄人たちは、すぐに「また来年の参加を目指す」と意気込んでいた。

(文中敬称略)

桝本 誠二 クリエイターズアイ代表取締役

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ますもと せいじ / Seiji Masumoto

1973年生まれ。広島県出身。米国留学を経て雑誌編集者へ。その後、書籍出版社に転職し、書籍の編集に従事する。ノンフィクション、時事関連の書籍編集部編集長を経て、ビジネス書系出版社へ転職。現在は、ビジネス書、ノンフィクション書籍の執筆・編集のほかに出版プロデュース、出版コンサルタント・セミナー、企業コンサルタントを行っている。著書に『ホーキング 未来を拓く101の言葉』(KADOKAWA)、『課長・部長のためのビジネス戦略の基本』『図解&事例で学ぶ問題解決の教科書』(共にマイナビ出版)、『広島カープの「勝ちグセ」戦略』(ぶんか社)がある。

 

 

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